「よく持ってたね、一年の頃の教科書なんて」
生物室。隣に座った鵠が、頬杖をつきながら教科書を覗き込んでいる。
「放置してた」
「私なんてすぐに捨てちゃった」
「思い切りが良いな」
「物が増えるの、怖いんだよね」
ぽつりと呟いた言葉。
それに合わせるように、俺も返す。
「俺は物が捨てられない」
ずっとあの部屋で、あのままで、待ってる。
「そうなの? 物持ちが良いだけじゃない?」
ふふ、と鵠は笑った。その声が意外に響いて、注意された。
クラス内で、鵠は一番派手で発言権のあるグループにいた。
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