私の1番嫌な記憶。
いつも夢に出てきてうなされる。
あれは、私が小学校に入る前の出来事だった。
早くに母を亡くし、父は私を大事に育ててくれた。
デパートにランドセルを買いに行った帰り道、交通事故に遭い、父は私を置いて逝ってしまった。
「ヤダよ。お父さん!一緒に天国に行こうよ!」
燃え盛る車内の中。
死を覚悟した私は、必死に叫んだ。
でも、父は否定した。
「ダメだ。お前には、まだ長い人生があるんだ。だから一緒には、行けないんだよ・・・・・・。」
この言葉を最期に父は事切れた。
「お父さん!お父さん!!」
煙が増し、息が苦しくなる。
『生きたいか?』
「え・・・・・・?」
そこには、お父さんじゃない別の男の人がいた。
「今なら1つ望みを叶えてやる。」
「・・・・・・生きたい。助けて。」
その後、駆けつけた消防隊員によって救助され、私だけが生き残った。
あの男の人もいなくなっていた。
私は、天国には行けなかった。
「おはよー!」
「おはよー。ねぇ、昨日の宿題やった?」
「うん。一応やったけど。」
「本当!?じゃあさ、後で見せてくんない?あたし、忘れちゃってさー。」
「え〜?まぁ、別にいいけど。」
「やった〜!」
いつもと変わらない教室内。
クラスメイトの日野さんと臼井さんの会話が聞こえてきて、心の中でクスッと笑う。
ただ、その気持ちを表に出すことはなかった。
私は、人と関わることが苦手だった。
ある事が原因で人と関わることを辞めてしまったからだ。
私は、他の人とは違う能力を持っていた。
人には見えない『あやかし』を視ること。
1時間目の数学の授業。
ノートを取り、ふと視線を上げると『あやかし』が教室を飛び回っていた。
当然、周りには見えない。
小さいドラゴンのような姿。
まるでぬいぐるみのような可愛い見た目の『あやかし』。
人の体調を良くしたり悪くしたり、ちょっぴり厄介な『あやかし』だ。
その子は、私に気がつくと羽をパタパタさせながら近づいてきた。
(あ。こっち来た。)
「あ〜。頭痛てぇ・・・・・。」
前の席にいた男子が呟く。
きっと、この子の能力のせいだろう。
(も〜。やるなら私だけにしてよ〜。)
私は、その子をひょいっと頭の上に乗っけると再び授業に耳を傾けた。
授業が終わるまで、ずっと頭が痛かったけど。
そんな感じで私の日常は、始まる。
「はーい。今日はここまで。」
「起立!」
日直の号令がかかり、椅子を引く音が響く。
「礼!ありがとうございましたー。」
「ありがとうございましたー。」