平日、本社ビル

竜二は外出から戻ってきた


「部長、社長が戻られたら部屋に来るようにと」

「わかった、行ってくる」


竜二は八階に行きドアをノックする

「例のもの届いたぞ」



「ありがとう。俺が買ってもよかったんだけど、そんなことしなくていいって言いそうだし、仕送り止められたんだから家賃もいいって言ったんだけど言うこと聞かなくてさ。

せめて携帯代だけでも負担してあげようと思って」


「しっかりしてるな(笑)」

「うん、定期預金もしてるみたいで、今は夏休みだから少しバイトも増やしてる」

「卒業したらすぐ結婚するのか?」



「俺はそのつもり。年齢的にもいいかなって、でも雫ちゃんは資格を取りたいっていう目標があるから、合格してからだと思うけど、試験に合格したら式の準備にとりかかるよ」

「わかった」

「じゃあ、これ、ありがとう」



竜二は自分の部屋に戻った

夕方、美咲からメールが入る



‘今、企画で仕事終わって下にいるの、少し話がある’

‘六階に来いよ’


「今から一人友人が上がってくる、来たら通して」

「はい」

美咲はエレベーターで六階に上がってきた


「いらっしゃいませ、こちらへ」

部屋をノックして美咲を通す

美咲は部屋をキョロキョロ見回す

「すごいね、個室で秘書付きなんだ」

「みんながそうではないけど、客の多い人や、俺は逆に外に出ることが多いから連絡事項は秘書が聞くことになってて外出先からでも対応できるようにしてる」



真木がお茶を運んでくる

「すみません」



「で、話って?」


「この間ね、竜二が買い物出てる時に広樹に言われたの。竜二のことはもういいのか?って、まあそこはみんなの前でもういいって言ったんだけど」


「うん」


「帰りにね、広樹が送ってくれてね……付き合わないかって言われたの。大学の時から実は好きだったって……」

「大学から?……全然知らなかった」

「竜二には敵わないと思ってて言えなかったんだって」


「広樹はいつもニコニコしててムードメーカーだし、美咲のわがままを聞いてくれるよ」

「うん、まあそうだと思う。で、付き合うことにしたの」



「よかったな、大きな身体で気は小さい奴のことだからお前に言うのは勇気を出したと思うぞ。呑んでたから酒の力も借りれたかもしれないが、大事にしてやれよ」

「うん、でね、雫ちゃんの料理を美味しいってバクバク食べてたから今度教えてって言っておいてね(笑)」



「お前が料理?無理だろ(笑)」

「だから初心者でも作れる簡単料理をちょっと企画のことも考えて」



「仕事にするのかよ……広樹ならお前の料理なら食ってくれるよ」

「まあ、聞いてみといてね」


「あー、でもちょっと試験受けたいらしいからそれが終わってからだな」

「試験?大学の?就活?」

「管理栄養士の資格らしい」


「あら、そうなの。肩書きがついていいかも(笑)わかったわ、企画眠らせておくから、まあ、一応報告に来ただけよ、帰るわね」

「ああ、またな」

美咲は帰っていった



真木がお茶を下げにくる

「今の方は夏祭りのイベント会社の方ですね?お見かけしました」


「ああ、大学時代の彼女だ」

「お綺麗な方ですけど、雫様のほうがお似合いです」

「そうか(笑)」


「結婚と恋愛は違いますものね」

「君もそうか?」


「私は大学時代からの付き合いなので一緒でした(笑)」


「まあ、お互い仕事を選んだ結果だ」

「そうですね、またそれも運命です」