週明けの月曜日、本社ビル
「今日直帰にするから」
「はい、わかりました」
「あと、水曜日は午後から出社する。病院連れていくから」
「やっとですね」
「あぁ、君にはスケジュール変更させて悪かったな」
「いえ、部長は普段から外も多いですし、何とでも言えます。部長こそ時間調整が大変だったでしょう」
「まあ、大学終わりの時間がな。でもなんとかなるものだよ。年末だったら出来なかったけど、雫ちゃん甘えないからさ。もっと甘やかせたいのに」
「でも、そういうお嬢様だから好きになられたんですよね?甘えてばっかりだと今までの人と変わらないですよ」
「……そう……だな。遠慮するのが可愛いのかもしれない。だいぶ欲しい物は言うようになったけど家の物ばかりだし……ワンピース買ってから服も靴も買ってないみたいだし、でもそういう子を俺は確かに選んだんだよな。
雫ちゃんの意見も尊重しなきゃ」
「お若いのにしっかりしてらっしゃるから側にいてあげるだけで雫さんは嬉しいのではないでしょうか」
「そっか……ん?俺、今までの彼女の事、なんで君に当てられないといけないんだ?」
「進藤様を見てるとそういう感じでつきあってらっしゃったのかなと(笑)」
「確かに……」
「あ、あと舟木店の内田さんの店長試験の合格の報告を課長から受けてます。近いうちに書類が回ってくるかと」
「じゃあ回ってきたら十二月一日付けで舟木店の店長に辞令を出す」
「はい」
雫の大学
「あれ、今日は会社の車じゃない。早退?」
「早退ではなくて直帰、一つ寄るところがあるんだけど車で待ってて。で、社にはもどらない」
「うん、わかった」
車中で話す
「どこで待ち合わせ?」
「家に迎えに行く」
「お兄さんは実家なの?マンション借りてたんじゃないの?」
「海外によく行くからマンションはもう解約してる。実家に自分の部屋あるしね」
「実家って遠いの?」
「大学からだと車で一時間くらいかな」
「それでマンション借りてたの?二年同じとこ通うのに別々のマンション借りて?」
「雫ちゃん、兄貴にどこまで聞いてるの?」
「えー、お互い彼女いたしやっぱり別々じゃないとー、竜二うるさいしー(笑)」
「ちょ、ちょっと兄貴は何を雫ちゃんに……」
「ふふっ、大丈夫。何とも思ってないよ」
「雫ちゃん、兄貴の言うこと全部信じちゃ駄目だよ」
「それは私が決める。同じ大学なのに一緒に住めばいいのにって思った」
「まあ、それぞれ諸事情があってさ」
「女の都合でしょ。竜二さんモテたから仕方ないけど」
「兄貴もモテたよ」
「まあ、カッコいいとは思う」
「えっ、俺より?」
「竜二さんのほうがカッコいい(笑)」
「よかった」