なにか買いたいんだけど。
 駄菓子屋って意外に硬いのが多いんだよなー。

 まあ、なんでもバリバリいける子どもが対象だもんなー。

 また歯を折って治療に行くの嫌だし、と噛みごたえのあるイカを諦め、色鮮やかな大根の漬物を諦め、串刺しのカステラと甘辛い手羽先を手にレジに行く。

 帰って、これで一杯やろう。

 ビールは売ってないかな、と小さな冷蔵のショーケースを眺めたが、そこにあるのは毒々しい色のジュースとラムネ。

 それにお子様ビールだけだった。

 ……サラリーマン向けなら、普通のビールも置いたらいいのに、と思いながら、お金を払おうとした。

 だが、キツネの男はなかなか値段を言わない。

 少し咳払いして、
「百六十一円です」
と不思議な声で言った。

 わざと、しわがれさせたような声だ。