「どんどん店舗増やしていきそうですよね」

 きっとおばあさんは、わたしたちが生きてる間はこの店には戻ってこないだろう。

 いつかの狸親子がまた人の姿でやってきた。

「いらっしゃいませ」
と壱花と倫太郎とイケメン狐が言う。

 体格のいい狸の父親が笑って、
「おや? いつからここは夫婦(めおと)でやるようになったんだい?」
と言う。

 夫婦……?
と壱花は思わず、倫太郎を見たが、倫太郎は視線をそらす。

 代わりに、イケメン狐が壱花の肩に手を回し、言ってきた。

「そうなんですよ。
 ここは、わたしとこの化け化けちゃんが夫婦でやることになったんですよー」

「誰が化け化けちゃんですかっ」
と壱花が狐を見上げて言うと、

「違うところに突っ込めっ」
と言いながら、倫太郎がイケメン狐の手を壱花の肩から引きはがす。

 疲れたサラリーマンと疲れていないあやかしでにぎわう町の駄菓子屋は、今日も元気に営業している。