「はい、ありがとうございます」
と壱花はお金を受け取った。

 じゃあ、と常務は去っていく。

「なんだ、別に仲悪いわけじゃなんですね」
と壱花は倫太郎に笑って言った。

「……悪くはない。
 あやかしより怖いだけだ」
と倫太郎は言う。

「ねえ、いつまで、ここで働くの?」
とイケメン狐が壱花に訊いてきた。

「さあ、おばあさんが戻ってこられるまでですかね?」

 駄菓子のつまったダンボールを手に倫太郎が言う。

「あのばあさん、なんで寺の境内にいるのかと思ったら、あやかしだけじゃなくて、坊主たちにも駄菓子売りつけてるらしいぞ。

 もうかってるみたいだから、しばらく戻ってこないんじゃないか?」

「へえ、生活に疲れたお坊さんに売ってるんですかね?」

「坊主も結構疲れてそうだからな。
 次はきっと、生活に疲れた神主だな」
と倫太郎は言う。