「あのときさあ、閉店まで店見ててあげたじゃん。
結構売ったんだよね、バイト代出ないの?」
レジ台に手をついた俳優のようなイケメンが壱花に向かって、笑いながらそう言ってくる。
「どうでしょうね。
ちょっとオーナーに相談してみないと」
と壱花はそのイケメン狐に言った。
オーナーとはあのおばあさんのことだ。
「ああ、あのやり手のばあさんね」
とよく知っているらしくイケメン狐は言う。
「バイト代が欲しいのなら、もうちょっと働いていけ」
という声が入り口からした。
外にあるガチャガチャの調子が悪いと海坊主に言われて見に行っていた倫太郎だ。
「社長、毎晩来なくていいんですよ、お疲れなのに」
と壱花は言ったが、
「いや、一日ゆっくりしてみてよくわかった。
もう十年以上ここに通ってたんで、やっぱり来ないと落ち着かないんだ」
そう倫太郎は言う。