へえ。
 最近は箱買いしてくれるサラリーマンのために、夜も駄菓子屋さんが開いてるって、ほんとだったんだな、と思いながら、覗いてみる。

 おや、あそこにスーツを着た背の高い男の人が。

 ずいぶんといいスーツのようだが、こんな人も来るんだな、と思いながら、壱花は店の奥にいるその男を眺めた。

 男はこちらに背を向け、壁際の天井からぶら下がっている紐にスーパーボールのクジをぶら下げている。

 その様子に、

 ん?
 お客さんじゃない?
と気づいたとき、

「いらっしゃい」
と人の気配を感じてか、スーツの男が振り向いた。

 顔にはキツネの面をかけている。

 ひっ、と思った壱花だったが、

 まあ、駄菓子屋だしな。
 クリスマスにサンタがいるのと変わりないだろうと気をとり直した。

 キツネ面の男がレジの向こうの丸椅子に座ったので、壱花はゆっくり店内を眺めてみることにした。