まぶしいな……。

 壱花は何度も目をしばたたく。

 まだぼんやりした視界の中で、身体の向きを変えようと思ったが、なにかが自分の身体を押さえつけていて変えられない。

 なんの妖怪が乗ってるんだ、と反射的に思ってしまったが、それは倫太郎の腕だった。

 ええっ?
と壱花は自分の横を見た。

 倫太郎がスーツのままベッドで爆睡している。

 ベッドはあのとき嗅いだ倫太郎の匂いがした。

 彼の部屋のようだ。

 い、一緒にここに転移しちゃったのかっ。

「しゃ、社長っ。
 社長っ、起きてください~」
と壱花は倫太郎を揺する。

 寝ぼけている倫太郎は自分を誰だと思っているのか。

 いや、なんだと思っているのか。

 毛布かなにかのように壱花を自分の腕の中に引き寄せ、ぎゅっと抱くとまた寝てしまう。

「起きてくださいっ、社長っ。
 遅刻しますよーっ。

 あるいは、もう遅刻ーっ!」

 窓から燦々(さんさん)と差し込む太陽を背に受けながら、壱花は叫んだ。