壱花たちが天井から吊るしてある玩具に身を屈めながら店内に入ったとき、
「いらっしゃい。
うちは現金払いだよ。
賽銭は泥を落としてから持ってきな」
と顔も上げずにおばあさんは言ってきた。
ぴたりと会計の台の前で足を止めた倫太郎が、
「ばあさん」
と呼びかける。
あん? とおばあさんは眼鏡を外しながら顔を上げた。
「おや、あんときの坊主、大人になったのかい」
「呑気だな、妖怪」
と小柄なおばあさんを見下ろし、倫太郎が言うと、
「おねえさんとお呼び」
と言い返してくる。
「わたしらの外見なんて、あってないようなもんさね。
望むなら、いつでもお前好みの美女に変化してやるよ」
と言って、おばあさんは笑った。