鳥居の向こうがほんのり明るかったからだ。

 この駄菓子屋を見つけたときと同じ灯りだ。

 壱花には予感があった。

「社長、行ってみましょうっ」

「えっ? 何処にだ?
 っていうか、店を勝手に開けられないんだが」
と倫太郎が言ったそのとき、入り口から人間の若い男が入ってきた。

 ミステリードラマに出てくる俳優のようなイケメンだ。

 壱花は慌てて、狐の面をかぶってみる。

 その面を通してみると、男は大きな狐に見えた。

「そこの狐の人っ」
と壱花はそのイケメンを呼ぶ。

「すみませんっ。
 この店、ちょっと見ててくださいっ」

 は? とイケメンが言う。

「行きますよ、社長っ」
と壱花は倫太郎の手を引くと、こちらもまた、は? という顔をしている倫太郎を強引にレジから連れ出した。