あのー、あなたのために言っているはずなのに、なにやら責められている感じになっているのですが……。

 職業病だろうか。

 会社と同じくらい容赦ないが。

 この人にはプライベートとか。

 プライベートだと人に対して甘くなるとかないのだろうか……と思いながら、

「それなんですよね~」
と言い、壱花は奥の台の上にあった古い手鏡を手に取った。

 今もわたし、ボロボロなんだろうか……と気になったからだ。

 おのれの顔をその手鏡に映そうとして、ん? と思う。

 鏡の中の風景に実際にはないはずの赤いものが映り込んでいたからだ。

 手鏡は店の入り口を映している。

 ガラス戸の向こう。

 公園があるはずのその暗闇にどこまでも伸びていく、赤い千本鳥居のようなものがある。

「社長っ」
と思わず壱花は叫んでいた。