(あが)りの古御所(ふるごしょ)妖猫(ばけねこ)が一瞬出て、全員消えた。

 勝ったのは、壱花だった。

「レアキャラですかね?
 もうちょっと見とけばよかった」
と派手な着物をまとったあやかし猫の姿を思い出しながら、壱花は呟く。

「すっかりあやかしに慣れたようだな」
と倫太郎が言った。

「そりゃ、何度も同じコマを行ったり来たりして、何体も同じ妖怪に背後に並ばれ、店中みっしりに正座されたら、さすがに慣れますよ。

 ところで、このすごろくって妖怪が遊ぶんですかね?」
と言って、

「知るか」
と言われる。

「でも、毎日こんなことしてたら疲れますよね、社長」

「いや、毎日、こんな阿呆なことはしてないが……。
 でもまあ、仕事の後だから疲れるな」
と倫太郎は言う。