「どんどん増えてってるなー」
と呑気に言っていた倫太郎だが、ふと気づいたように、

「待て。
 これだとあやかしが増えて、この店、あやかし側に傾いてってるよな?

 人増やして、人間の世界に近づくんじゃなかったのかっ。
 誰だ、妖怪すごろくなんてはじめたのっ」
と叫び出した。

 いや~、と苦笑いしながら、壱花はサイコロを振ってみた。

「二、海坊主。
 あ、よかった。

 増えない」
と壱花は言ったが。

「いや……」
と倫太郎が後ろを指差す。

 つい、振り向いてしまっていた。

 壱花の後ろに、蛸入道、海坊主、河童。

 そして、もう一体の海坊主が、もう座敷に座れないので、開いた襖の向こう、店のコンクリートの上に正座していた。

 いやあああああああっ、と叫ぶ壱花の前で、倫太郎も叫ぶ。