「一、蛸入道(たこにゅうどう)か」
とサイコロを投げた倫太郎が呟く。

 その表情は仕事中のように真摯で格好いいが、やっているのはすごろくだ。

 この人、常に全力投球なんだな、と壱花は思った。

 そういえば、この店もイヤイヤやっているわりには、綺麗に掃除されているし、品揃えもいい。

「これ、ゴールに近づいていってるのかどうかわからんな」
と言いながら、倫太郎はコマに書かれている数字を眺めている。

「どう行くのが最短コースなんですかね?
 っていうか、海坊主と蛸入道の違いがよくわかりませんが」
と言ったが、盤を見たままの倫太郎に、

「お前の後ろを見たらいい」
と言われてしまう。

 ……そういえば、背後でなにかがぴちゃぴちゃ動いている音がする。

 真後ろにおそらく、(たこ)

 そして、左右には、海坊主と河童がいる。

「これ、コマ進んでも、前のあやかし消えないじゃないですかっ」