「五、河童。
 皿の水が乾いて一回休みっ」

 読み上げながら、うっ、と思ったが、

「でも、河童なら、ちょっと可愛いか」
とうっかりはっきり見てしまわないよう、視線を動かさないまま、周囲を気にする。

「いや、おっさんの河童もいるだろうが。
 ……ああ、おっさんだ」
とあやかし慣れしている倫太郎は壱花の右斜め後ろを見ながら言った。

 左後ろに海坊主。

 右後ろにおっさんの河童。

 今、自分は生臭い二人を従え、座っているようだ。

「はは、早く投げてくださいっ」

「待て、落ち着け。
 勝負事は焦らない方がいいんだ」
とサイコロを手に倫太郎は盤上を見つめて言う。

 いや、あなた、めちゃめちゃ本気じゃないですか……?
と思う壱花に倫太郎は言ってきた。

「どんなものでも俺は負けるのが嫌いだ」

「そりゃ別にいいんですけど。
 なんで、この人たち、私の方にばかり寄ってくるんですっ?」

「物珍しいからだろ。
 俺のことはこいつら、あやかしの一種だと思ってるから」

 ……どんなあやかしより強引で凶悪そうですもんね、と壱花は思う。