「よし、六か」
と笑う倫太郎に、

「これ、その数、進むわけじゃないですからね……」
と負け惜しみのように壱花は言う。

「六、海坊主か
 次、お前」
と言いながら、倫太郎はコマを進める。

 はいはい、と壱花はサイコロを振ろうとしたが、ちょっと気になって訊いてみる。

「あのー、私の斜め後ろに誰か座っていませんか?」
「気のせいだろ」

 いや、なんかいる……。

 海坊主っぽいものが座ってる、と思ったが、恐ろしくて、正座しているらしいその足の辺りまでしか見られない。

 ちょっと濡れた黒い足。
 短い青い着物は膝上までしかない。

 ひい、と思いながら、壱花はそちらを見ないようにして、サイコロを投げた。