ほんとうに細かいおぼっちゃまだ……と思う壱花の側で、倫太郎は言う。

「ちょっと待て。
 それ以前に、全然、呪いが解けてないじゃないか。

 やっぱり、駄菓子が食べたくて、ここにいるわけじゃないんじゃないか?」

「えー?
 じゃあ、別のものですかね~?」
と壱花は少し腰を浮かして、店内の物を見回す。

 天井からぶら下がっている玩具類が視界に入った。

「あ、駄菓子屋の玩具で遊んでみたかったのかもしれませんよ、お友だちと」

「……何度も言うようだが、友だちはいたからな。
 お前の頭の中の俺がどんな感じか気になるぞ」
と言う倫太郎を、まあまあ、となだめ、奥の座敷ですごろくをすることになった。

 妖怪すごろくだ。

「私、買いますよ。
 これ、浮世絵っぽくて飾るのにも良さそうだし。

 江戸時代にも流行ってたらしいですね、妖怪すごろく」

「まさしく江戸の品だな。
 百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)
 歌川芳員(うたがわ よしかず)の作だ」

 なにかの図録で見たことがある、このおぼっちゃまは言う。