「社長は呪いにかかって、ここにいるというより、なにか心残りがあって、ここに囚われているんじゃないですかね?」

 そう壱花は言ってみた。

「人を霊みたいに言うな……」
と倫太郎は言うが。

「実は駄菓子を食べてみたかったとか」

「いや、嫌いだ」

「駄菓子屋で、もんじゃ焼きを食べてみたかったとか」

「この店は、もんじゃはやっていない」
と言ったあとで、倫太郎は言う。

「昔の駄菓子屋は結構いろんなものを売ってたらしいな。
 衛生管理もなってない状態で食べ物を出してたから、当時の駄菓子屋とか海の家とかで食べるのは命がけだったらしいぞ」

 それでも、子どもたちは親に内緒にしてでも買いに行っていたようだが、と言う倫太郎に、
「命をかけても食べたい。
 それが駄菓子なんですね」
と壱花はしみじみと言った。

 そんな壱花を見ていた倫太郎が、ふいに、
「……わかったよ」
と言ってきた。

「お前の言う通り、もしかしたら、俺の中に『駄菓子を食べてみたかった子どもの俺』がいて、ここに執着しているのかもしれない。

 念のため、食べてみることにしよう」