電車に揺られながら、脳裏に一昨日の出来事を映した。
眠りから覚めたような心地になりながら、窓の外を眺める。
もう二時間ほどたったのだろうか。初めは大きな建物や看板が見えていたのに、いつの間にか線路の真横を家々が並び、田舎らしい緑の世界が広がってきていた。
ここはどこなのだろう。でもまあ、いいや。今日は思うがままに動く日。
最終、スマホさえあれば、位置情報なり地図なりを使って帰ることができるし。
どうせなら五つくらい向こうの県にでも行ってやろうかな。
私が悩んだ日の翌日に出て行かなかったのかには、理由がある。
一月二日には親戚の集まりがあって、お年玉を大量にもらえるからだ。
すなわち、今私の懐は暖かいということ。
安いホテルになら、一泊くらい泊まれそうだ。
電車がガタンと揺れ、スピードが落ちる。車内アナウンスで、次の駅名が優しく耳に触れた。
『標山~、標山です。お降りのお客様は、お忘れ物の無いようご注意ください』
しめやま?
駅名だけが妙にゆっくりと聞こえた。電車が完全に止まり扉が開くと、ぞろぞろと人が降りていく。
なんとなくその波に乗りたくなって、慌てて私も電車を降りた。
その駅は、最近改装したと言わんばかりに綺麗だった。
屋外にむき出しになっているホームは、壁が黒に近い色で塗られているにも関わらず、日の光に照らされ、明るく感じられた。
田舎のはずなのに人は多いし、一体ここに何があるというのだろう。
そう思いながらも、私は人の流れに身を任せて歩いて行った。
「あ……暑い」
なんとなく人についてきた先は、駅名の通り山だった。
何でも、この山の頂上に神社があるらしく、あまり詳しくは知らないけれど、大変ご利益があるそうだ。
観光客には有名らしく、三が日ということもあり、人が集まった模様。
私も、そのご利益というものを求めて、登ることを決意した。あわよくば、私の悩みの解消方法を教えてくださいと。
まあ解決方法と言っても、就職をする気は毛頭ないわけで、受験から逃れることができないのは承知の上だ。
だから、正直自分も何のために登るのかわかっていない。ただ、たまには普段しないことに挑戦してみるのもいいかもしれないと考えた結果だった。
はっきり言って、浅はかだった。
本格的な登山と言うほどの山ではないが、登り始めて早一時間。
かなりの急斜面の石段を上っているのに、一向に頂上は見えてこない。
ずっと歩いているため、足は痛く、体は火照ってじわりと汗までにじみ出てきた。
コートとマフラーを脱いで腕にかけ、息を切らしながら進み続ける。
だが困ったことに、分かれ道が多いため、観光客の人たちは右に左に散らばって行った。
みんな、どの道が正しいのかわかっていないのだろう。
会話の内容を盗み聞きしようとしたが、運の悪いことに外国人がほとんどで、何を話しているかよくわからない。
私は中間地点のような見晴らしの良い開けた場所で止まり、スマホで道を調べた。
しかし、画面に表示されたのは、緑色の中に小さく現在地を表す青い点だけ。
つまり、この画面からわかるのは、『あなたは今山の中にいます』という情報のみ。山の中の道なんて描かれていなかった。
『標山 ルート』と検索をかけても、出てくるのは簡易的な道の全体図。
今度はあたりを見回して看板を探したが、ない。あるのは裸になった木々と砂利、石段やコケのついた木製の手すりだけだ。
そこで、スマホに夢中になっていた私はようやく気が付いた。
人が誰もいないということに……。
「え……嘘でしょ?」
確かに、よくわからない道のため引き返していく人もあり、少しずつ人数は減っていたが、まさか誰一人いなくなるなんて思ってもみなかった。
葉の無い木々が風に煽られ、ザアッと不気味な音を立てる。一気に体が冷え、再びコートを羽織った。
「帰ろ……」
心を落ち着かせるため、わざと大きな声でつぶやいた。
もう機能していない足を懸命に動かす。筋肉の無い棒のような私の足は、血液を心臓に戻すことができないよう。重いし痛いし、できれば近道でも通って帰りたい。
『チリン―――』
元来た道を下ろうとすると、背後から金属音のような、どこか透き通った音が風に乗って耳に入った。
振り返ると奥にもう一つ、下に続く石段がある。
無視するつもりだった。でも、まるでこちらが正規の下山ルートですよというように、その石段だけ、手すりが新しいプラスチック製の物だったのだ。
『チリン―――』
また聞こえる。間違いなく、この石段の先からだった。
正直、今まで通ってきた分かれ道を全部は覚えていない。だったら、正規ルートか近道かはわからないけれど、綺麗な道を通った方が安全なんじゃないかな。
間違っていれば、また戻って来ればいい話。
そう思って、ゆっくりと音のする方に足を延ばした。
かなり登ったからか、一本道にも関わらず、随分と長く下った。
やっぱり戻ろうかなと思いつつも、またこの石段を上るのが嫌で、綺麗な手すりに手をかけながら、不安定な道を進み続けた。
影はまだ短いから大丈夫だろうと、どこかで自分に言い聞かせていたのかもしれない。
石段も終わりを迎え、そこから先は、地面も舗装されていない湿った獣道が延びている。
足の痛みや冷たい風、火照った体のことなんて忘れていた。ただこの先にあるものの正体を知りたいだけ。
そうして行きついたのは、ものすごく小さな神社のようなところ。
『チリリン―――』
その白い鳥居の向こうから、今度ははっきりと、あの音が聞こえてきた。風の音じゃない、何か別の自然の声。
私はそれに吸い寄せられるように鳥居をくぐった。
「……え?」
プツンと電気が切れたのかと思った。
突然辺りは真っ暗になって、前も後ろもわからない。
目を開けているのか閉じているのかもわからず、私は闇の中で意識を失った。
「うわ、なんじゃこやつは」
「なんじゃ、騒がしい」
「まぁた、迷い込んで来たみたいじゃ。しかも今度は若い女子じゃ」
「またか! もうそろそろこの山も、呪いか何かの悪い噂が出回るぞ」
耳元で、変わった声がぼそぼそと会話していた。やたら「じゃ」という言葉の多さに、少し耳が痒くなる。
私はゆっくりと重たい瞼をこじ開けた。
「全く、困ったものじゃ。標様はどこに行かれた?」
「馬鹿者。標様が行かれる場所など、あやかし商店街以外なかろう」
「ああ全く、あの方はこういう肝心な時に……」
目の前の生き物の言葉が途切れる。
それもそのはず。薄暗い中、私とその二体はバッチリ視線を交えていたのだから……。
「ぎょえ!」
「ぎゃっ!」
「きゃあ!」
汚く濁った叫び声の中に、私の悲鳴が混ざる。しかも、三人の声がエコーにかけられたように、この空間に響き渡った。
声の主は、暖かそうな白い毛並みで覆われた、犬のような生き物だった。
「お……起きとったんなら、はよ言わんかい!」
体を少しピクピク震えさせながら、一匹が私を責めてきた。
いや、それよりどうして犬と会話できてるの⁉
「えっと……犬さんたち、喋れるんだね」
「馬鹿者! ワシらは狐じゃ!」
「そうじゃ! 神様にお仕えする白狐じゃぞ!」
焦りを紛らわすために訊いてしまった、とんちんかんな質問に、白狐たちは頭からプンプンと空気を出しながら怒ってしまった。
でも、神様ってどういうこと?
それにここはどこなんだろう。
頭が混乱していて、白狐たちに謝罪も忘れ、スマートフォンで時間を確認した。
「え、つかない。なんで」
いくら電源ボタンを押しても、画面に光が灯ることはない。充電はほぼ百パーセントだったはずだ。いきなり切れるわけがないのに。
「お前、この山がどういうところか知らずに来たのか?」
いきなり真剣そうな声のトーンで話しかけられた。背筋がスッと冷たくなって、鳥肌が立つ。
なに? 確かにそこまで調べてないけど、まさか、心霊スポット的な何かなんじゃ……。
「はっはっは! 見ろ右狐、怖がっとるぞ」
いきなり一匹が笑い出した。
なんなのこの狐は。
『右狐』と呼ばれる白狐は、今まで二匹とも調子がそっくりだったのに、今回はやれやれとした様子でため息をつく。
「なぜこんな奴の方が上なのかわからぬ。白狐が人をだましてどうする! ただの狐と同じレベルに落ちても良いのか⁉」
「なっ。お主、また言ったな⁉ ワシの方が役立つ狐じゃからに決まっておろう! それに騙してはおらぬぞ!」
「なんじゃとお!」
つい数秒前まで仲良さげに見えていたのに、今にも取っ組み合いが始まりそうな勢いで、睨みをきかせていた。
狐にも上下関係のようなものがあるのかな。そういえば、人間にも左大臣や右大臣があったし、それに似たものなのかもしれない。
『チリーン────』
まただ。
その音は白狐たちにも聞こえたようで、耳をピクリとさせ、口を閉ざした。騒がしかった空間は、まるで追っ手から身を隠すように、静まり返る。
チリン、チリンと次第に音は近づいてくる。強く、激しく、透き通って―――。
「たっだいまー!」
バーンと扉に体当たりするようにして入ってきたのは、陽気な声を弾かせた人だった。
その人が入ってくるなり、薄暗かったこの空間に、光が駆け抜ける。いきなり明るくなったせいで目がくらみ、思わず瞼を閉じた。
数秒経って光が落ち着き、ゆっくりと光を取り入れると、辺りは日がさしている。顔を上げると、意識が途切れる前に見た白い鳥居と、その手前に、いくつもの紙袋を腕にかけた大学生くらいの男の人がいた。
「見よ、右狐、左狐! 今日も掘り出し物ばかりだ!」
白狐たちがひょこひょこと男のもとへ走る。
その人は、染めたのか天然なのかわからないけれど、鳥居と同じ白い髪が特徴で、耳には風鈴のような大きなイヤリングが付いていた。
「ああもう、まぁたこんなに買われたんですか」
「そうだ! 良いだろう!」
何の気なしに白狐たちと会話をする男。子供のように目を輝かせながら、二カッと笑った時、イヤリングが『チリン』と音を立てた。
「あ、それ……」
「ん?」
やっと音の正体がわかった私は、思わず指をさして声を出してしまった。
ようやく私の存在に気付いたらしい謎の男と視線が絡まる。吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に、私はしばらく魅了されていた。
「あ、迷子?」
「え?」
男の人はそう言って、耳についた風鈴にそっと触れる。
「これ、うるさかっただろう? ごめんな」
先ほどまで小学生かと思えた顔つきは一瞬にして掻き消され、まるで兄のような優しい表情で苦笑した。
それにしても、どうして私がその音を探してきたことが分かったのだろう。
「ええ、ワシはもう人間の世話はこりごりじゃ……」
「ワシもじゃ。標様、早うこやつを返してくだされ」
白狐たちはあからさまに嫌な顔をして男に頼む。
いや、世話って何のこと? それに、冷静になってみれば、何なのこの状況。白い狐は喋るし、変な人はいるし。いつから私は夢を見ているのだろう。眠った覚えなんてないのに。
「うーん。まあ、いいじゃないか。それよりそこの人間のお姉さん! この服どう⁉」
全く考える気がなさそうなのは見ていてわかる。くるくると表情を変えながら、紙袋に手を突っ込み、ポイポイと服を引っ張り出す姿を横目に、白狐たちは呆れ顔でため息をついていた。
男の人が紙袋から出すのは、全て洋服。でも、それらはすべて変わったものばかり。
ピエロが着ていそうな、奇抜な色の服。紫色のスパンコールで埋め尽くされたジャージ。大きくて赤い謎の花柄が散りばめられた、青ベースのズボン。その他もろもろ、一体どこで買ってきたのだろうという服が、紙袋五つ分ほどあった。
「えっと……。ちょっと、ない……ですかね」
正直に伝え、ちらりとその表情を見ると、『ガーン』という文字が顔から浮かび上がってきそうなほど、眉は下がり、口は空いている。
すらりと伸びた体つきと整った顔は、ただのしょげた可愛らしい子供のようになっていた。
「で、でも、この服はどうだ⁉ これは最先端でかっこいいって、みんな言ってくれるんだぞ!」
見せてきたのは、彼が今着用している服。
Tシャツにジーンズと、いかにも部屋着感が凄かったが、問題はそれではなかった。
白をベースとしたTシャツに、大きく黒字で『Beef or chicken?』と書かれているにも関わらず、なぜかその下に豚の絵が描かれているのだ。あまりにもバラバラすぎる。
「ふふっ……あはは! そんな服、どこで売ってるんですか!」
笑いをこらえることができず、大笑いをしてしまった。
だって、こんなにも意味が分からない服があること自体が面白いし、それをめちゃくちゃイケメンな人が着ているんだもん。
「あーお腹痛い。久々にこんなに笑ったかも」
私が涙を拭って男の人を見ると、今度はうずくまっていて、白狐たちが背中をさすっている状況だった。明らか沈んでいるのがわかる。
「こりゃ!お前、さっきから仮にも神様に対して、何たる無礼なことを言っとるんじゃ!」
「そうじゃそうじゃ! 見よ、こんなにも落ち込んでいらっしゃるではないか!」
え……神様?
今、白狐たちが発した言葉を、上手く理解できなかった。だって、歳は大学生くらいに見えるし、イケメンなのに子供っぽくて。霊感もない私に見えるわけもないのに。でも白狐は喋ってるし、スマホはいきなりつかなくなるし、ここがどこかもわからないし……。
よし、これは夢だ。夢だと思おう。
とりあえず自分にそう言い聞かせ、神様と言われる彼に近づいた。
「ご、ごめんなさい。だって、神様って着物とか着てそうなイメージだったから……」
瞳の潤んだ顔が私を見上げる。プゥっとほっぺを膨らませ、「神様だって、人間みたいにオシャレしたいのだ! 最先端でかっこいい服を着たいのだ!」と言って、そっぽを向かれてしまった。
「ああもう、言わんこっちゃない」
そっくり白狐の一匹が、疲れた顔で私に言った。
どうしよう。私は完全に神様の地雷を踏んでしまったらしい。
「あ、じゃあ、お詫びにその最先端を教えてあげますよ」
正直、ファッションセンスはそれほどないし、流行りの服も知らないが、神様よりはましなはずだ。
予想通り、神様は勢いよくこちらを向き、目を輝かせて話題に食いついた。
「本当か! 人間の最先端でかっこいい服を選んでくれるのか!」
「あ……まあ、はい。お店がどこにあるのかわかりませんが……」
「来い! 行きつけの商店街にたくさん店があるぞ!」
私は神様に腕を引かれ、鳥居をくぐって外に出た。今度はちゃんと、意識はある。
神様と一緒だから、空でも飛べるのかと思ったけれど、普通の人と何ら変わらず石段を駆け上った。
違うとすれば、この急な石段を走って駆け上っても、疲れないことだろう。
後ろを振り向けば、白狐たちがせっせと追いかけてきていた。
「やっぱり犬みたい」
神様に腕を引かれているという事実に、触れた部分が少しだけ熱く感じる。
その背中も、どこか安心できて、さっきの出来事が記憶から削除されたのではと思うほど、この人になら何を任せても大丈夫な気がしていた。
神様に手を引かれる、という何とも不思議な体験をし、『行きつけの商店街』とやらについた。
商店街というより屋台に近いと思われる。狭い道を挟むようにして左右に並ぶお店。
神様の言う通り、服や鞄、食べ物に文房具など、様々な品を売っていた。
それらは私たちの生活と変わらないのに、それを売っている店主が少し違う。
大きなお腹を前に出し、頭にハチマキを巻いた狸。人形のように手招きをする猫。目をつりあげた黄色い狐などが、客を呼び寄せる。
ちらほらお客さんらしき人がおり、店主と話していた。
お客さんは日本語を話しているが、店主は日本語でも英語でもない、鳴き声のような言語を話していて、私には理解ができなかった。
「あの、今更なんですけど、ここってどこですか?」
タイミングを逃し、ずっと聞きそびれていたことをようやく聞くことができた。
神様という存在を知ったものはいいが、これは夢なのか、異世界なのか、はたまた『見える』体質になってしまったのか。
「ん? ここは頂上付近だ」
神様はそういいながら、色んなお店の商品を物色している。
道理で話が噛み合わないはずだ。ていうか、さっきまでここで買い物してたんじゃないの?
するとふくらはぎに、暖かくてふわふわしたものが触れた。見下ろすと、白狐の一匹の尻尾が触れており、何か話した気な表情で私を見ている。もう一匹は、神様について行ったらしい。
「ワシが代わりに説明してやろう。あの方は一度何かに集中すると、周りが見えなくなるからな。あれでも話を聞いている方じゃ」
だったら、いつもはどれほどひどいのだろう。そんなことを想像すると、白狐たちが呆れるのも無理はないと思った。
「良いか、よく聞くのじゃぞ。ここは夢でも異世界でもないし、お主が変な物を見えるようになったわけでもない。同じ世界じゃ」
「同じ世界? じゃあ、現実ってこと? それにしても、私が考えてることよくわかったね」
狐はフンッと鼻を鳴らし「だてに何千年間、人間の世話係やってないわい」と誇らしげに言った。
「難しいかもしれんが、元々この世界は、お主のよく知る世界ともう一つ同じ世界が少し重なり合ってできているのじゃ」
言っていることがよくわからなくて、ポカンとしている私を見て、狐は赤い紙と白い紙を取り出した。
「赤い紙がお主の世界。白い紙がここ、あやかしの世界じゃ。人間たちは知らないと思うが、実はこの世界は半分だけ重なっている。
ワシらは皆、お主ら人間のことが見えるが、人間はそうじゃない。
この重なった部分があろう? そこに属すのが、いわゆる霊感の持ち主じゃ。
そやつらは、お主の世界におってもワシらのことが見えるが、重なっとらん赤い部分に属す人間には見えん。それが大半なのじゃがな。
ちなみにここで人の姿をしとる客は皆神様じゃ」
赤い紙の上に半分だけ白い紙が重なり、真ん中がピンク色に見える。
つまり、このあやかしの世界から見れば、私たちは丸見えだけど、こちらは一部の人にしか見えないと。
「なるほど。じゃあ私は見える体質になったってことね」
「ああもう、違う違う。お主は真っ赤な部分に属す、生粋の見えない人間じゃ」
「ええ、じゃあどういうこと?」
生粋の見えない人間って、何その皮肉っぽい言い方。だったら他に、私がここにいる理由だとか、見える理由とかがあるのだろうか。
「お主は今、神隠しに合っているんじゃよ」
「か、神隠し?」
狐は紙を地面に置いた。今度はそのピンク色の部分に小石を置いた。
「霊感のある者がワシらを見るのと神隠しでは、決定的に違うところがある。
それは肉体の存在位置じゃ。霊感のある者は見えるだけで、肉体はそのままの場所にある」
ピンク色のところから動かない小石を眺めていると、白狐がそれをつまみ上げ、次は赤い部分に置いた。
「ところが神隠しは、肉体ごとこちらの世界、つまり白い紙の部分に飛んでしまうのじゃ。
さっき言ったろう? 白い紙であるワシらの世界は、普通の人間には見えないと……」
赤い部分にあった小石は、白狐に操られ宙を舞い白いスペースに移動する。
だんだんと声を低くして話すその内容に、血の気が引いていく感覚を覚えた。
そうだ。夢だと洗脳して、考えないようにしていたが、神様に手を引かれて石段を上る途中、何人かとすれ違ったが、こちらを見向きもしなかった。
普通、人間があんなに勢いよく石段を駆け上っている姿を見たら、どうしたものかと変な目で見られるはずなのに。
走っても疲れない。真冬にTシャツを着ていても、寒いと感じない。暑いとも感じない。
それは同じ世界に見えても、違う世界だということを表していた。
がやがやと騒がしい商店街の真ん中で、一人背筋が凍った。手のひらは冷たくなり、スッと冷や汗が流れる。周りの音が妙に大きく聞こえて、私を囃し立てているように感じた。
「帰れ……ないの?」
蚊の鳴くような声で、つぶやいた。足元の狐は紙を持ったまま、不思議そうに答える。
「帰りたいのか?」
「そりゃあ……」
まるで、ここに来た人はみんな帰りたくないと思うのが常識だと言わんばかりの表情だった。逆にいきなりこんな変な世界に来て、帰りたくないと思う人なんているのだろうか。
「それは本心か? 神隠しに合う人間や、特に標様の元に呼ばれる人間は、何かしら理由がある。標様はその内容をご存知じゃろうが、解決するまで帰れんと思うぞ」
振り返り、神様を探すと、相変わらず店を転々とし、品物を手に取って確認している。すでにその手には、紙袋が二つあった。
「あの神様、絶対わかってないよ。ていうか、私のこと完全放置じゃん」
「こりゃ! あれでも一応神様なんじゃぞ! それにな、標様を舐めたくなる気持ちはわからなくもないが、本当に素晴らしい方なんじゃ」
「仕えてるのに、右狐も神様のこと舐めるんだ」
「ワシは左狐じゃ」
いや、このそっくりの見た目でどう見分けるというのだろう。まるでコントのようなツッコミに笑ってしまった。
出会った当初は、右狐に『なぜこんな奴の方が上なんだ』と言われていたが、少しだけ理由がわかった気がする。
「見分け方わかんないよ。そっくりなんだもん。あと左狐、この世界の説明上手いね」
「これまで何千年と標様にお仕えして、人間の世話をしてきたからのう。
最初のころなんぞ、理解してもらえるまで数日かけて説明と体感をしていたからな。
いつしかの人間に『左狐は〝じゃ〟とか〝こりゃ〟という言葉が多い』と言われたことがあるから、そこで見分けるしかないんじゃないかのう」
それは見分けるというより聞き分けてるんじゃないの、と思ったが言わないでおいた。正直、これからも区別できる気がしない。
「おーい! 人間のお嬢さん! ちょっと来てー!」
遠くから神様の声が聞こえた。ついでに呼び鈴を鳴らすように、耳元のイヤリングをリンリンと響かせている。
「あーはい! 今行きます!」
人波、いや神波を掻き分けて、私は神様の元へ向かった。
その店は閉店セール中の服屋のように、ワゴンに大量の服がグシャリと山積みになっている店だった。
ただし、閉店セール中でもなければ、私たち以外誰もいない。目を吊り上げた黄色い狐が一匹、定位置であろう高めの椅子に座っていた。
「コココ、コココンコ!」
店主が神様に何か話している。でも狐語なのか、何を言っているか全くわからない。
「おお、そうであろう! だがな、この娘がこの服を悪く言うんだ。だから、人間の最先端の服装を教えてもらおうと思ってな」
「コココン⁉ ココン、コンコンコココン!」
今度は私に向かって何かを言っている。けれど、さっぱりその言語は理解できない。白狐たちとは普通に話せるのに。
「お前、どこが悪いか言ってみろ。だってさ」
神様が笑いながら訳してくれた。多分、この変わったTシャツは、ここで売られていたのだろう。
「えっと……。まず、『Beef or Chicken?』の意味わかってますか? 牛肉か鶏肉か、ですよ。なのにどうして豚のイラストが描かれているんですか? 面白さとしてはいいと思いますけど、かっこいいとはあまり……」
ここで作られたのかはわからないけれど、これをかっこいいと言ってることは事実だから、一応『かっこいい』の基準を修正してあげた。
神様はプルプルと震えていた。また泣いてしまったのかと焦ったけれど、どうやら必死に笑いをこらえているらしく、引き笑いをしながら私の言葉を店主に伝えている。
また店主に怒られるかと思ったけれど、なぜか今度は顔面蒼白になって、一言も口を開かなくなった。
「こいつな、本気でその服かっこいいと思っていたのだとさ。人間の最先端ファッションはこれだと」
確かに、誰もあんなデザインの服を着ていないから、ある意味最先端なのかもしれない。
それに、さっき買っていたスパンコールのジャージたちよりはマシだもの。
でも、少し強い口調だったかもしれないと反省した。私が狐の言葉を理解できたら、こんなにショックを与えなくて済んだはずだし、何より神様という通訳者を通さない方が手っ取り早い。
狐語は厳しくても、もっと色々な言語を話せたら楽なのかな。
「まあ、もう服の批判はいい! かっこいい今どきの服とはどんなものなのだ?」
神様は待ちきれないといった様子でワゴンを漁る。
私も、ちょんっと服をつまみあげて考えた。
「あ、これ。こういうのとかどうです?」
私が拾い上げたのは、黒いロングコートとズボン、そして白いワイシャツだった。
至って普通で、流行りとかではないけれど、これくらいしかまともな物がなかった。
「少しシンプル過ぎることはないか?」
「大丈夫です。シンプルイズベストですから」
まだ疑心暗鬼な神様に対し、一度試着してくださいと頼んだ。
試着室があるか心配だったけれど、ほとんど使われていない汚れた試着室ならあるらしく、そこに神様を放り込む。
入る時は渋っていたものの、着替え終わると勢いよくカーテンを開けた。
そこには、予想通りのイケメン神様が誇らしげに立っていた。鏡も備え付けられていたので、自分でその良さを実感してくれたのだろう。
白と黒という安定の組み合わせに、神様の真っ白な髪色が上手くマッチしている。
「か、かっこいいです」
思わず見とれてしまった。店主の狐や白狐たちも同じようにコンコン呟いている。
「そうか! さすがだな、えっと…舞!」
「え、どうして私の名前を…?」
「そりゃ、神様だからな! 狐!お会計!このまま着て帰る!」
店主は慌てて値段を計算し、タグを切っていた。白狐たちも神様に財布を手渡す。
嬉しそうにクルクルと回る神様。その様子を見て、なんだかこちらまで笑みがこぼれてしまう。
お会計が終わり、通りに出た。
元着ていた服は今日買った別の紙袋に突っ込む。
「シンプルイズベストって本当なんだな! 柄が沢山ある方がかっこいいと思っていた!」
「柄物も悪くは無いですけど、あの服はちょっと……ですね」
それを聞き、神様は声を上げて笑った。新しくてかっこいい服に出会えて、とても幸せそう。
流行りとかをもっと知っていたら、他にもかっこいい服を教えてあげられたのかな。
まあ、あのお店だとこれが限界だと思うけれど。
そう思っていると、神様の笑い声がピタリと止んだ。不思議に思って見上げると、神様は真剣な表情で、斜め向かいのお店を見ている。
「どうしたんですか? そんなに良いものがありました?」
「ちょっと待ってろ」
相変わらず話がかみ合わない。でも白狐と一緒に急ぐ姿を見て、何か異変が起きたことを察知した。
向かいのお店もざわざわとしていて、私もその野次馬の一人になる。
よくよく見てみると、お店の中ではなく、店と店の間にしゃがみ込んでいた。神様たちの間を上手く通り抜け、視線の中心の近くまで来る。
「迷子になったのだな」
何か力が込められているような、優しすぎるその言葉に、心臓がドクンと脈を打つ。
神様がそうつぶやいた相手は、頭に小さな角を生やした、リンゴ三つ分ほどの黒い鬼のようなもの。手には槍のようなものを持っており、小さく震えていた。
「そうか、苦労したな。本来ならばもう少し話を聞きたいが、ここにいると、お前の命が危ない。さあ……」
突然、強い風が吹き荒れた。穏やかな陽だまりのように暖かい風。
その流れは神様から小さな鬼に向かって吹いている。
流れに沿って、小鬼の背後に、風鈴のついた白い鳥居の階段が現れた。
小鬼のサイズに合わせた小さな鳥居の並びは下を向いており、階段の終わりは光が溢れていて見ることができない。
まるで、白いブラックホールのように吸い込まれそうだった。
「さあ、行け。こちらがお前に相応しい」
神様がそう唱えると、鳥居についた大量の風鈴が、風に乗って一斉に鳴り始めた。
高い音、低い音、ゆっくりだったり速かったりとバラバラなのに、耳触りの良い綺麗な和音が響き渡る。
その音を聞いていると、心臓の動きがどんどん激しくなって、目眩がした。呼吸が荒くなって苦しい。
風鈴の音が、ガンガンと頭を攻撃しているように感じた。
「ぽふっ」
そんな感触が耳にあった。ふわふわと触り心地の良いそれは、音が聞こえないように塞いでくれているのがわかる。
今にも倒れそうなほど腰が曲がったまま、視線を後ろへ向けると、いつの間にか肩の上に白狐が乗っていた。
音が聞こえにくくなったおかげで、頭の痛みが少し良くなり、また神様の方へ目をやる。
小鬼が神様にぺこりとお辞儀をし、終わりの見えない鳥居の階段を下りて行った。
小鬼が光に包まれ見えなくなると、風鈴は止まり、鳥居の階段は煙となって消えていく。
光も収まり、神様はスッと立ち上がった。
「もう大丈夫だ。ちゃんと帰した」
周囲の者に優しくそう伝えると、みんな安心したように会話を再開しながら散っていった。
私だけがしゃがみ込んだまま、呆然との様子を眺めている。
「ああ全く。だから標様に待っとれと言われたであろう!」
肩からぴょんっと地面におりた白虎に怒られる。
すると神様はガラスに触れるかのように、そっと私に手を差し伸べてくれた。
「大丈夫か? 苦しくないか?」
「あ……はい」
力の抜けた声でそう答えた。差し出された手に自分の手を重ね、引かれるままに立ち上がる。
「あの、さっきのは……」
聞いていいものかわからなくて遠慮がちに聞いてみたが、神様は「ああ」と察してくれたようだった。
「あれは地獄の見習い鬼だ。鬼にも色々あるみたいでな、ここに迷い込んでしまったらしい。
ただ地獄の使いである鬼が、神隠しにあって、このような聖なる場所に長時間滞在すると、消えてしまう可能性がある。
だから、奴にとって相応しい道に帰したのだ」
まだ手を握ったまま、なんてことないというようにサラリと答える神様。
先程の余韻なのか、再び心臓が飛び跳ねて暴れている。
鳥居の階段、数々の美しい風鈴、神様の綺麗な横顔、どれも目に焼き付いて離れない。
耳の奥で、あの優しい声が繰り返し再生されていた。
いや、これはさっきの余韻だ。絶対そうだ。苦しかったから、きっとそれが怖くて忘れられないだけ。
「そ、そういえば! どうして苦しいってわかったんですか!?」
じわりと滲み出ていた手汗を誤魔化すように手を離し、少し俯いた状態で神様に質問する。
なんだか顔が火照っている気がして、神様を見ることが出来ない。視界に入っているのは、同じ角度で首を傾けた白狐たちだけだった。
神様の「うーん」と考える声が耳に入る。
「まあ、それは後でだな! あの店に行こう!私がよく寄る店だ!」
綺麗で優しくてかっこいい神様が、質問をはらぐかすように一瞬で子供に返る。
せっかく離した手をまた掴まれ、今度はスキップを始めた。
まるで幼稚園児の遠足だ。手を繋ぎながらスキップだなんて。
そんなことを考えていると、途中でいきなり立ち止まり、顔を覗き込まれた。
何かと思って首を傾げると、神様はニッと白い歯を見せて笑った。またスキップを再開し、今度は鼻歌を歌い始める。
それに合わせて、耳元の風鈴もチリチリと踊った。
神様、あなたは一体何をしたいんですか?
こんなことして、何が楽しいんですか。
暴れ狂う心臓を、なんとかして落ち着かせようと視線を落とした。
そこには、背中にはひとつずつ、神様の忘れていた紙袋をのせた白狐たちが、せっせと走っていた。
「紙袋、服、右狐、左狐。紙袋、服、右狐、左狐……」
「なにをブツブツ言っとるんじゃ」
恐らく左狐と思われる白狐に、白い目で見られる。
それでも馬鹿げた感情を打ち消すのに必死で、呟き続けた。
神様のよく行くお店とやらは、これまでの屋台型とは違い、ちょっとした小屋のようだった。
表には神様が身につけている風鈴と似た形のものが風に吹かれて揺れている。
ここまで来てようやく手を離してくれた。
暖簾を潜り、木製の引き戸を滑らせると、頭にタオルを巻いている五十代くらいの細身のおじさんが、座ってお茶を飲んでいる。
でもここでは確か、人の姿をしているのって皆神様だったような。でも神様が働いているというのは変だ。商店街でも、一度も見ていない。
「ああ、標様!いらっしゃいませ」
その人は立ち上がり、頭のタオルを勢いよく外して、頭を下げた。
「敦史、今休憩中か? 」
「はい、そうです。あ、その子、もしかして…」
敦史、と呼ばれるおじさんは、笑顔で私と神様を交互に見る。
その表情から、悪い人ではなさそうだと判断できた。
「大丈夫だ舞。こやつは人間だ」
「え、に、人間!?」
人間ってどういうことだろう。見える人?神隠しにあった人? いずれにしろ、小屋まであるくらいだから長い間ここにいることは確かだ。
「そうだ。こやつは河西敦史と言ってな、三十年ほど前に今の舞と同じく神隠しに合った人間だ」
「さ、三十年間もここに…?どうして?」
そう聞くと神様とおじさんは、まあまあ落ち着けと言わんばかりに、奥の座敷へと連れていってくれた。
少しじめっとしたカビ臭い部屋の真ん中に、小さな囲炉裏があった。
おじさんは私と神様、そして白狐たちに、沸かしたてのお茶を入れて渡す。
神様は熱いお茶を勢いよく飲み干し、ぷはぁと息を吐いた。
「いつもな、人間が来た時はここに連れてくるのだ。体験談を聞いた方が早い」
わけがわからず困った顔をしておじさんを見る。おじさんも苦笑いをして、話し始めた。
「えっと、左狐か右狐に聞いたかな、この世界のこととか今まで何人もの人が来たとか。あと、標様のことも」
「あ、神様のことだけ知りません。というより教えてくれません」
神様は笑いながら誤魔化し、「ちょっと外に出てくる!舞、ゆっくり話を聞け」と言ってさっさと出ていった。
おじさんと白狐はやれやれといった様子だったが、こんな初対面の人と一緒にいるのは少し気まずい。白狐たちがいるからまだいいけれど。
「まあ、つまりはねお嬢さん。標様は、迷った者たちを導く、道標の神様なんだよ」
「道標?」
「そう。それを踏まえた上で、僕のこれまでの人生を話していくね」
正直、おじさんの人生なんてこれっぽっちも興味がなかった。
でも、神様がいつもここに連れてくると言うくらいなんだから、なにか理由があるのだろうと思い、私は背筋を伸ばして話を聞いた。
「僕の父は風鈴を作る職人だったんだ。高校一年生の時、初めて風鈴を作った。形は歪だったし音も濁っていたけれど、凄く楽しかったんだ」
チリン、と壁に飾られている風鈴が音を立てる。
よくよく周りを見てみると、色とりどりの風鈴が並んでいる。
「でも生活は苦しかった。だから父は僕に風鈴職人を継がなくてもいいと言ったんだ。自分でも、これから一生生活が厳しいのは嫌だったから、普通に会社員となる道を選んだ。
でもそこは酷い会社だった。暴言暴力、残業で会社に寝泊まりの日々、少ない給料。
当時は当たり前のようになっていて、自分が社会についていけないのが悪いんだと精神的に落ち込み始めていた。
そんな時、追い打ちをかけるように両親が事故で亡くなったんだ」
ほんの数分で壮絶な人生の一部を聞かされた。おじさんは苦笑いをしているが、こちらはどういう反応をすればいいかわからない。
ただ真剣に、話の続きを待った。
「もう駄目だと思ったね。自分も両親の元に行こうと思った。でも死ぬ勇気もなければ、退職する勇気もない。
酒に走って、ベロベロに酔っ払って、今度は本当に走り出したくなって走った。ってことまでは覚えているんだけど、お酒のせいか気がついたら朝で、白い鳥居の前に倒れて寝ていたんだ」
なんだか、私と似ていると思った。お酒に走ってはいないし、ここまで壮絶な人生でもないけれど、苦しくて、逃げ出したくてここ辿り着いたのは同じだ。
「それで、標様と出会ったんだ。まあ最初は色々と振り回されたね」
部屋の隅に置いてある紙袋を見てそう言った。白狐たちもうんうんと頷いている。
「変な音のする風鈴を耳につけているし、服装はおかしいし、本当にやばい神様だと思ったよ。
でもね、標様は全てわかっていらっしゃった。
ああやって弾けてらっしゃるが、それは全て、やって来た人間に悟られないように悩みを解決し、その人の決断した道へ歩ませるため。
それがあの方の優しすぎるやり方なんだよ」
それを聞いて、私は今までのことが全て繋がった気がした。
おちゃらけて、子供のようにはしゃいで、人の話は聞こうともしない。
でも、そのおかげで私は神様に気を許すことができ、知り合ったばかりなのにこんな怪しげなお店にまで付いてきた。
本当に大事なことは全てわかっていて、小鬼のこともいち早く見つけて助けてあげていた。
本物の神様だ。
何故か目頭が熱くなってきて、おじさんの顔がぼやけてくる。頬に生暖かい雫が落ちてきた気がした。
おじさんは何も言わずに、傍にあったティッシュ箱を渡してくれた。
「す、すみませ……。続きを、お願い…します」
鼻をすすり、目を擦った。おじさんは程よいタイミングで、再び口を開く。
「標様は、正しい道というものは教えない。その人が決めた道が、より上手く進むように、相応しい道順を示してくれるんだ。目的地は自分で決めて、標様はその道順を教えてくださるだけ。
僕は、もうあちらの世界に帰りたくなかった。帰るのが怖くなってしまったんだ。だから僕は、この世界で生きるという道を選んだんだ」
おじさんは、この道に進んで幸せだと言いたげだった。
ただ、少しだけ疑問に思った。
ここに来たのは三十年ほど前の話。それは新入社員の頃だと言っていた。
今、おじさんの身なりは五十代に見える。他の神様や生き物たちは、誰一人老いていないのに。
「あ、あの……。人間はここに住むことを決めても、時の流れは普通の人と同じなんですか…?」
おじさんは「やっぱりそう思うよなぁ」と頭を掻きながら言う。
「お嬢さんの言う通り、僕の時間はこっちにいても変わらず進む。
いつかは死ぬんだ。その時は、人の世界のこの山の中で、いつしか遺骨で見つかるらしい。
行方不明になっているはずだから、山の中で遭難した人の遺体が見つかりました、って」
おじさんは笑っていた。それら全てを受け入れた上でここにいるんだ、と言っている気がした。
「そうだ。敦史はあくまで、神隠しにあった人間だからな。あ、そういえばな、これは敦史が作ってくれたんだぞ!」
いつの間にか、入口の前に腕を組んで立っていた神様。涙でぐちゃぐちゃの私に、耳についた風鈴を見せてくる。
「そう、僕は標様に救われたんです。ここで父の仕事であった風鈴を作れるようにして下さった。
高校生の頃に作ったっきりで、作り方を思い出すのも大変だったけれど、その時も標様はさりげなく支えてくださったんだ。
そのお礼に、昔の風鈴を今風にしてプレゼントしたんだよ」
神様は本当に照れているのか、ちょっとだけ口角を上げて俯いている。
その感情を表したように、イヤリングが音を弾かせた。
「ふ、風鈴は昔は違ったんですか?」
思い切り鼻水をかんだ後、そう聞いてみた。
するとおじさんは立ち上がり、タンスのひとつを開けて、何かを取り出す。
「これだよ、昔標様がつけていたのは。僕が標様に手作りの新しい風鈴をあげた時、お礼だって言ってくれたんだ。今でも大事に保管しておりますよ、標様」
最後は神様に向かって微笑んでいた。神様は「あーもーいらぬいらぬー!」と言いながら私が手に持つ風鈴を奪おうとしてくる。
その風鈴は青銅らしきものでできていて、今のガラス製とは全く違った。少し揺らしてみても、鈍く重い音がする。
最先端好きな神様にとっては、今つけているガラスの風鈴は宝物だろう。
「風鈴は、中国から伝わったらしいんだけど、当時は風の向きや音の鳴り方で物事の吉凶を占うものとして使われていたんだって」
おじさんが説明をする。
そうか、道標の神様だから、風鈴を付けているんだ。今まで神様だからという理由で気にしないでいたが、よくよく考えてみれば耳に風鈴なんて変すぎる。
「まあ、この風鈴は感謝している。前のものも重いと思ったことは無いが、鈍い音が耳元で鳴り続けていると、動きたくなくなるからな」
フッと笑って、照れを隠すように頭をかいた。白い髪がふわりと揺れる。
「その髪色もなにか理由があるんですか?」
「ああ、白は穢れの無い色だからじゃないか?
まあそれはさておき、さあ、そろそろ行こう!さっき飲食店を見てきたが、美味そうなものがあったのだ!」
また声の調子を上げ、私の腕を引っ張る。
さっきは傍に隠れて聞いていたのかと思ったけれど、本当に外に出ていたんだ。
私は湯呑みをおじさんに渡し、お礼を言って外に出る。
神様も、「ありがとう敦史!また頼む!」と言い放ってお店をあとにした。
お店の前に出て、神様はふうっと息を吐く。
白狐たちは何も言わず、大人しく付いてきていた。
「さて、あそこに行くか」
落ち着いた表情で、今度は離れて歩き出す。
当たり前のことなのに、今まで暖かく握られていたものが無くなって、急に手が寂しく感じた。
大事なプリントを忘れてしまった日みたい。
そう思い込んで、自分の感情に蓋をする。
気付かなければ、これは名前のないただの感情。
だから、見て見ぬふりを貫いた。
神様の後ろに並び、見えてきたのは商店街の終わり。
広い公園のようになっているけれど、たくさんのベンチやテーブルが置いてあって、人型神様がお喋りをしていた。
「ここは頂上の休憩所だ。ほら、あそこに神社があるだろう? そこで参拝してる奴らは皆人間だ」
神様の休憩所の隣には、確かに神社らしき小さな鳥居と祠があって、頂上にたどり着いた人がちらほら参拝していた。
参拝に来た一人のお兄さんが、チャリンと小銭を入れ二礼二拍手をし、目を閉じている。
『今年も家族や親戚、友達が、健康で楽しく幸せでいられますように』
不思議な声がこの休憩所に響いた。まるで迷子のお知らせのように、エコーを通した声だった。
その声が聞こえ終わると、お兄さんは一礼をして、帰って行く。
そのとき、休憩所でのんびりとしていた神様の一人が、お兄さんに手をかざした。
すると、急に強い風が吹いて、お兄さんの髪が激しく揺れる。お兄さんには見えていないのだろうけれど、その風は少し緑色に光っていて、お兄さんに降りかかっていた。
『孫が今年受験なので、無事合格できますように』
次の人は、本格的な登山服を着たおばあちゃんだった。
その人に向けて、また別の神様が手をかざす。
再び吹き荒れる風は、青く光って見えた。
「あれが加護だ」
光を浴びる人達をぼんやりと眺めている私に、神様が言った。
光はその人に纏わり付き、共に下山していく。
「ご利益があるって聞いたけど、本当にあるんですね」
「ああそうだ。それはここだけに限らない。どこでもあるんだ」
「そっかあ。だから山の上って風が強いんですね」
ここに来なければわからなかった。知らない世界だった。神様だって、いればいいかなくらいの感覚でしかなくて、実際にいるなんて思いもしなかった。
「まあ、加護といっても、全員に全力で与える訳では無いがな。時と場合、人間性にもよる。そして、それぞれの願いに合わせた神が、加護を与えるのだ。
神の休憩所である頂上は、人が少なく神は多い。加護を受ける可能性も高くなるということだ」
いつになく真剣に、色々と教えてくれる神様。
遠くを眺めている横顔は、おじさんの前とは打って変わって大人びた顔つきだった。
「さて、ゆっくり話でもするか」
優しく私に微笑みかけ、ザクザクと砂利の上を歩き、ベンチへと向かっていく。
「え、飲食店は?」
私がそう聞いても、神様は微笑み返すだけだった。
なんだろう、この胸騒ぎは。神様の話が怖い。嫌だ、聞きたくない。
神様はベンチに座り、欠伸をして腕を天高く伸ばす。白狐たちは、お呼びでないことをわかっているのか、テーブルの下で休んでいた。
私はテーブルを挟んで向かいに座り、今にも面接が始まりそうな雰囲気に不安が押し寄せる。
「小鬼が来た時に、聞いたよな? なぜ舞が苦しんでいることがわかったのかと」
私はあの鳥居の階段のことを思い出し、首を縦に振った。
「あれはな、この世界のものでない者を、あるべき場所に帰す力を働かせていたのだ。
だから、舞もそれに引き寄せられた。
だが、ここに呼ばれた原因を解決出来ていないから、魂と体が分離しそうになった。それに抵抗するために目眩などが起こっていたのだよ」
「え……」
さり気なく、物凄く恐ろしいことを言われ気がする。だから白狐もあんなに怒っていたのか。
もしあの時白狐がいなければ、体と魂が分離して、死んでいたかもしれないと……。
神様は表情を変えることなく、真面目な顔をして続けた。
「人はな、後悔をする生き物だ。何度も何度も、あの時ああしていれば、と。違った道に進んだ時の可能性ばかりを考える」
青く澄んだ空を見つめていた。そうしている間も、願いの声は鳴り響く。
「舞、お前は今、何が辛い? 苦しい? 声に出して、私に言ってくれないか?」
そう聞くのは、私が悩んでいる内容を、わかっていないわけではないのだろう。
ただじっと、真剣な眼差しで私の目を見ていた。
「……辛い。苦しい。私には夢がない。もうすぐ大学受験なのに、やりたいことが何も無い」
私は催眠術にかかったかのように、口からボロボロと言葉を落としていく。神様の瞳の奥の世界を見つめながら、私は無意識に語っていた。
「お父さんみたいに物凄く賢いわけじゃない。お母さんみたいに、人に優しくできる人間でもない。私は…欲しかった。私にも、たった一つだけでも誰かに誇れる素敵な何かが欲しかった。
憧れてた。だからお父さんとお母さんみたいになりたいって思ってた」
自分でも考えたことの無かった感情が、言葉になって溢れ出る。私の中の、別の誰かが話しているかのようだった。
瞬きをすると、ポタポタと涙が落ちる。それでも開放された言葉たちは、止まるということを知らなかった。
「どうなるのかわからない。怖い。とりあえず賢い大学に進んでも、ついていけなかったらどうしよう。
何となくついた職場があわなかったらどうしよう。
続けられなかったらどうしよう。
老後のために約二千万円も貯金しなきゃいけないって言われている時代なのに、ほんの数歩先の未来も見えなくて怖いよ……」
ああ、知らなかった。私、本当はこんなに不安だったんだ。
自分の感情は、自分が一番わかっているつもりでも、本当はわかっていないことを初めて知った。
知らないうちに、都合の悪いことは見ないでおこうと感情に蓋をし、ストレスとなって溢れたそれは、行き場を失って自分自身を攻撃するんだ。
「怖いよな。自分の人生がどうなるかわからないのは不安だよな。それでいいんだよ、自分の感情に正直でいいんだ」
神様は目を逸らさずに優しく笑った。それから、少し前のめりになって、私の頭に手を伸ばす。
暖かい手のひらが、そっと私の髪を撫でた。
神様は魔法使いなのかもしれない。涙が滝のように流れ出て止まらなくなる。止めたいとも思わなくなっていた。
ずっと泣きたかったのかもしれない。ずっと誰かに相談したかったのかもしれない。
ずっと、この考えや気持ちは恥ずかしいものだと思い込んで、自分の中に溜め込んでいたのかもしれない。
「人は迷う生き物だ。それは我々神が、人に生を宿す時、必ずいくつもの試練を与えているからだ。それをどう乗り越えるかが、課せられているのだよ」
神様はベンチに座り直し、参拝客を眺めた。私もその視線を追い、ちらほら訪れる人々を見る。その影は、少し長くなっていた。
「どんな道に進んでも、それは決して間違っていない。それはその人にとって正しい道だ。だって、どう頑張っても過去には戻れないのだから」
そうだ。当たり前のことなのに、私たちは異様に過去に縋り付く。あの時こうしていれば、今は違ったかもしれないと、結局変わらない現状から目を逸らす。
私だって、何度もあった。数え切れないほど沢山、小さなことから大きな問題まで後悔した。
どうしようもないことに対して、悩み苦しんだ。
過去に戻れないことなんて、わかっているはずなのにわかっていなかった。
「時々、敦史のように死の道へ進むか迷っている人間もやって来る。事情はそれぞれだが、それでも死を決断するのなら、それもまたその人の正しい道なのかもしれない。
ただ、試練というものは一時的なものだ。時は必ず流れるし、その人の行動次第でどうにでも変えることができる。
その一時的な感情に支配されて、全てを終わらせてしまうのは勿体なくはないだろうか」
神様は固く拳を作っていた。きっと、今まで何人もの人々を助けてきた中で、辛かったことも何度かあったのだと思う。
でも私は、今現在その一時的な試練や感情に支配されている。多分、私以外にも、この世にはそういう人がたくさんいるはずだ。
苦しくて、脱出したいのに、どうしたらいいかわからない。同じ地点で同じ考えを延々と繰り返す辛さ。逃げてしまいたくなる気持ちはよくわかる。
「それでも、わかっていても支配されてしまうんです。終わりが、先が、未来が見えないから……」
神様は小さく「そうだな」と言って、作っていた拳を壊した。
「これはただの例えだ。死以外のことであれば、細くとも道はある。だから、どうか逃げて欲しい。逃げること自体は全く悪いことではない。むしろ、逃げ出す勇気があるのは素晴らしいことだ」
神様の思いが、どんどん自分の中に流れてきた。神様も苦しいこと、辛いこと、嫌なことがあっただろうに、自分の終わらない人生の上で、ずっと人々を支え続けている。
優しすぎるんだよ、神様……。
神様はまた私の瞳を吸い寄せた。涙と鼻水で汚れた顔なんて、見られたくないのに、それよりももっと大切なことがある気がして、話に集中した。
「舞が嫌なら避ければいい。それがお前にとって正しい道となる。ここに残ってもいい、元の世界に帰って頑張ってもいい、死を選んでも……」
最後の言葉は、「いい」とは言わなかった。神様だから、私の言うことを尊重したいと思っているけれど、本当はそんなことして欲しくない、という気持ちが痛いほど伝わってきた。
「私は……神様と離れたくない。……でも、私はこのまま立ち止まったらいけないと思う。ちゃんと向き合いたいと思う。向き合って、前に進みたい。動かないと、何も変わらないから」
これがきっと、本心だ。神様が私の心の引き出しを開けてくれた。
ああ、もうお別れなんだ。
受け入れ難い運命を、私は悟ってしまった。
「でも…まだわからない。目的地が見えないままだから」
私は自信がなかった。戻っても同じことを繰り返してしまう気がしてならない。
すると、神様は私の両手を優しく包んでくれた。
「大丈夫。思い出して。舞は、この神隠しで何を感じた?何をやりたいと思った?何が楽しかった?」
この、神隠しで……。
走馬灯のように駆け巡る思い出。
きっと、まだ数時間しかたっていないだろうに、新しい物事をたくさん見た。
喋る面白い白狐たち。
ファッションセンスがなく、言葉の通じない狐。
地獄から迷い込んだ鬼。
白い鳥居の階段と風鈴。
元人間のおじさん。
頂上で加護を授ける神様と、知らぬ間にそれを受け取っている人々。
そして…変人で子供っぽいのに、実は相手のことを一番に思いやれる優しい神様。
「全部…全部新しくて、楽しかった。
色んな生き物と話すことの楽しさとか、逆に通じないもどかしさ。
服だって、神様たちのセンスのなさは本当に面白くて、ちょっとセットをつくってあげただけであんなにも喜んでくれて、嬉しかった」
神様は目尻を垂らし、口角を上げて白い歯を見せる。
言葉にしなくても、言いたいことがわかった気がした。
『もうわかってるじゃないか』と。
私たちはそのまま立ち上がった。
休憩所のなるべく端の方へ行き、神様はそっと手を離す。
私はしゃがみ込み、神様の足元にいる白狐たちの頭を撫でた。
「左狐も右狐も、本当にありがとう。二人とも、すっごく素敵な狐なんだから、どっちが上とかないよ。さすが、神様の使いだね!」
そう言うと、照れ隠しなのか「こりゃ!犬扱いするでない!」「そうじゃそうじゃ!やっと世話係から解放されて、せいせいするわい」と話している。
でも、細い目の隙間から見える潤んだ瞳と、明らかに小さく垂れ下がった尻尾に、強がっているだけなんだとわかった。
「さあ、そろそろ帰らねば。日が暮れてしまうぞ」
私は立ち上がり、もう一度神様を見つめた。
もう二度と会えないかもしれない。だから、涙を堪えて、必死に目に焼き付けた。
「何かあれば、またこの山を登ればいい。きっと目に見えなくとも、舞に合う加護を与えてくれるはずだ。さあ、こっちだ。この道が舞にヒントをくれるだろう。ただ、それをどう捉え、そこから何を得るかはお前次第だ」
風が吹き荒れる。春のような、何かに応援されているような暖かな風。
シャランと風鈴の音が背後から聞こえ、振り返ると大きな鳥居の道が、ずっと奥まで続いていた。
「……神様!!」
風に逆らい、私は神様に手を伸ばす。神様の背中に腕を絡ませ、ついに限界を迎えた涙が溢れた。
「神様…ううん、標様…。私は…標様のことが、好きでした」
自分の感情に正直でいいんだと、標様が言ったんだ。だから、今だけは、この気持ちに蓋をしたくない。封じ込めたくない。
これで、最後にするから────。
「私は…皆の神だ。平等に、人々導くという使命がある」
……知ってるよ、そんなこと。そういうところを、好きになってしまったんだから。
すると、そっと暖かい腕が、私の背中に回された。
ぎゅっと、力強く。
神様に心臓があるのかわからないが、自分とは違う速い鼓動が伝わってきた。
それだけで、もう十分だった。
「大丈夫、きっと舞なら何にでもなれる。どこにでも進める」
私はゆっくりと腕を離した。標様も、それに合わせるように私を解放する。
私は涙を拭い、全力で笑みを浮かべて、鳥居の並ぶ道へと走った。それでも溢れ続ける涙は、風に乗って飛んでいく。
風鈴が、私の声をかき消すように鳴っていた。
「私、頑張るから!!がむしゃらでも、もがいてでも、進み続けるから!!だからっ────」
─────見ていて。
あの日、私は外国人に起こされて目が覚めました。
私がスマートフォンで道を調べた、あの広い場所。
英語でもないその言語を、私は理解出来ず、なんとか身振り手振りで一緒に下山しました。
標様、進む道を教えて下さるとはいっても、少し厳しめにしましたよね?
あの時、すごく大変だったんですから。
でも、おかげで今の私があります。
色々な国の言語を知り、コミュニケーションを取れるようになりたくて、国際系の大学に進学しました。
やっと、何のために勉強をしているか、わかった気がします。
それに、外国人もよく訪れる有名な服屋さんで、アルバイトをするようにもなりました。
標様の喜ぶ顔が忘れられなくて、お客様に素敵な服を着て喜んでもらおうと、日々頑張っています。
来月、私は留学します。
なので、しばらく会いに来ることができないかもしれません。それに、標様との距離も、さらに遠くなってしまいます。
ですが、どうか見守っていてください。
私の選んだこの道を。
私は目を開け、手を下ろし、一礼をした。
強い風が、背後から私を押すように吹き付ける。
『チリン────』
ようやく、あの風鈴の音を心地よく感じる季節がやってきた。
【完】
主人公・舞は、四月から高校三年生になる女の子。
しかし将来の夢が無く、もうすぐやってくる受験に不安を抱え、現実逃避として気の向くままに出かけることを決意。
そうして行き着いた先は「標山」という、頂上に神社がある山だった。
ところが途中で迷子にあってしまう。
そこで出会ったのは、喋る狐たちと、超絶イケメンなのに子供っぽい神様。
ところが、神様には一つだけ欠点があり、その欠点を埋めるべく、商店街へ向かう一行。
商店街のあやかしたちや、ちょっとした事件、ある人との出会いで、神様の役目(道標の神様)や本当の思いなどを知る舞。
次第に神様に惹かれていくも、自分自身の気持ちに蓋をし続けていた。
そして迫る別れの時。ついに舞は神様に思いを打ち明ける。
その数年後、舞は再び標山を訪れた。
神様たちが見えない世界で、頑張っていることやその先進む道について語る。
かっこかわいい神様が、何かに悩んでいる人の心の支えになれるようなお話です。