翌日も同じ時間に買いに来てくれて、今度はあんドーナツの取り置きを頼まれた。

あんドーナツを翌々日に買いに来てくれた時は肌の白い綺麗な女性も一緒だった。その女性もまた、パンを大量に買ってくれて、その日は品切れになった。

「いつも有難うございます!お知り合いの方も一緒に連れてきて下さり嬉しいです」

パンが閉店前に品切れになるなど滅多になく、店長でありパン職人の父も驚きを隠せずに日持ちする焼きドーナツなどの"おまけ"を袋に詰め込んでいた。

「馴染みのパン屋があると教えたら、是非行きたいと言っていて一緒に来ました」

ニコリと笑い、パンが入った袋を彼は受け取る。

彼の笑顔はどこか艶のある笑顔で鼓動の高鳴りを感じるが、肌の白い綺麗な女性が彼女か奥さんなのかと思うと諦めもついてしまう。

家族経営のパン屋で働いていると恋なんて遠のいてしまうものだ。

男性が来店しても家族連れだったり、カップルだったりする。主となるお客様は女性が多く、出会いさえもない。

彼は唯一の貴重な存在だったのだ。

彼女が彼にとってどの様な存在なのかは謎だが、二人きりで一緒にパンを買いに来たのだから大切な存在なのかもしれない。

期待はしてないのだけれども、何か言いたげな表情をして彼は私の顔をじっと見つめているので顔が火照り始める。

「あの…、何か?」

「…大変失礼かとは思いますが…最近、体調が優れないとかの症状はありますか?」

「え…?」

「顔色が悪いので……」

「実は肩が重くて、災難続きなんです」

「そうですか…」

袋を受け取った彼が私の顔を見ていると思っていたら、顔色の悪さに気付いてくれたらしい。