「父親は俺が小学生の時、死んだんだ」


「…」


明るい笑顔を日々与えてくれる悠希から告げられた悲しい事実。


唐突に告げられあまりにも衝撃過ぎて言葉に詰まり、なんて言えばいいかわからない。


下手な同情は傷がつくだけだし、優しい言葉も嘘っぽく聞こえる。


「俺が倒れた父親を支えて病院に連れて行ったんだ」


父親の体を幼い悠希が小さな体で必死に支えている姿が目に浮かぶ。


どんなに不安で、どんなに悲しんだかあたしの想像では計り知れない…


暗い部屋になってから話し出したのは、顔を見られたくなかったんだろう。


泣きそうな顔なんて…


「小学生って…そこからお母さんは一人で悠希を育ててくれたの?」


人事なのに涙が出てしまいそうだった。


でも、腹をくくって話してくれているのに泣いたらここで話しは中断しそうに感じて、泣くのをこらえ唇を震わせた。


「俺、三人姉弟なんだけど、母親は再婚もせずみなくてもいいのにずっと父親の両親も面倒みて大変だったんだよ」


耳を塞げるものなら塞いでしまいたい。


悲しい過去が彼にあったなんて思いもしなかったから。


そんな素振りも見せず、人一倍明るくて、あたしには悩みなんて無さそうに見えていたから…


「女一人で育てるって並大抵じゃできないよ」


悠希はどんな心境で話していたのだろ。


きっと伝えきれないくらい苦しくて、つらくて泣きたかったはず。


「その時から俺が家族を守るんだって決めたんだ」


力強く話す悠希の声に曇りはなく、とても澄んでいて偽りじゃないとわかった。


それと共に悠希の強さを改めて知ったんだ。


ちゃんと理解すべき。


でも、悠希がこんなに腹を割って話してくれたのにあたしは自分の家庭の事情なんて絶対話せない。