悠希と付き合うちょっと前から密封された空間が日に日に苦手になり、何が原因かわからないが風呂に入るたび呼吸も荒くなっていた。


狭いバスタブに掴まり、小刻みに震える手で体と髪をささっと軽く洗い、洗ったか洗わないかわからぬうちにすぐに出る。


体は冷えきったが、呼吸が落ち着くまでその場で目を瞑り、ジッと耐えしのぐ。


怖い…怖いよ…あたしこのまま死なないよね?


不安感は付きまとって離れはしない。


狭い空間と息苦しさに頭が狂いそうだ。


だが、人がいると思うせいか10分もたたぬうち少し呼吸は落ちついた。


息苦しさは若干残っているが、急いでジャージに着替えた。


こんな情けない姿を悠希にさらし、心配させるわけにはいかない。


それでなくとも慶太の事や性病の件で散々振り回したのだから…


今起きた息苦しさには気付かれまいと平然とした顔を作り、あたしは扉を開けた。


「気持ちよかった~眉無しすっぴんで悪い?」


失態に気付かれないように笑いを誘おうと、悠希めがけて冗談を一発かます。


「お前さぁ、眉毛風呂に落としてくんじゃねえよ。全力で探してこい」


「はははっ」


悠希の方が一枚うわてで、不覚にもあたしが笑ってしまった。


気付いてない。よかった…


あたしの異変に気付いてないのを確認してから悠希の手をひき、一緒に布団へ入り、しんどい体を休ませる。


そしていつも通りテレビを見て、会話が始まった。


「や~れ~ねぇ~」


悠希は枕に顔を埋め、足をばたつかせ、性病のせいで体が重ねられないのを嘆く。


「しかたないじゃん」


「ん~ん」


顔を近付け、唇を尖らせ、わざとキスをせがむ悠希。