“ごくっ”


悠希の目をジッと見つめ生唾を飲み、緊張は最高潮に達する。


崖まで追い詰められ逃げ場がない。


踏み外したら即転落。


そんな感覚に近い。


「白!」


「白?あんっ?」


「アホ!性病じゃなしって意味だ。歩。お前だけが黒!」


「へっ!?歩が黒って!?」


「お~ま~え~が~誰かに貰ったんだよ~へへへっ」


病気をもらった張本人、それは間違いなくあたしだった。


悠希はまっさら。


浮気ゼロ。


「でも、歩は浮気してないよ!」


浮気したと誤解されまいと必死で弁解しようとしたが、悠希は顎に手を当て、冷静に会話を続けた。


「歩とできないのはきついけど、俺、我慢する。内心は死にそうだがな」


ここまで話しておいてもやっぱり過去について悠希は問いたださず、何も聞かない。


期間から考えて思い当たるとすれば、相手は元彼の慶太のみ。


慶太しかいない…


間違いなく悠希はわかっていたんだ。


慶太はふれちゃいけない相手だったから。


慶太と最後に会った日に二人で交わした約束を悠希は自ら守った。


本当は複雑だったはずなのに、こんな時ですら平気な顔をするんだ…