「浮気かぁ。あたしも浮気はしてないけど過去が過去だけにさ…」


会話の流れに乗り、何気なくずさんな過去を話そうとした時


「別に過ぎたんだから過去はいいじゃん。嘆いたって変わりゃしねんだしさ」


あたしが励ます立場なのに、なぜか逆に励まされてしまった。


悠希は過去を聞きたくないのか言いかけると必ず中断させる。


誰だって自分の好きな相手の異性関係や性癖など聞きたいわけがない。


それなのにあたしはどこまでも無神経な奴だ。


「あ~だね。まあいいや。本でも読め」


椅子に置いておいた漫画を悠希に手渡し、そのまま会話をずらし、たわいもない話を続けた。


そんなこんなをしていたら検査結果は刻々と迫り、看護師が視線をこっちに向け近づいてくる。


「林悠希さん」


看護師に再び呼ばれ一瞬で緊迫した二人は、顔を見合せ互いの目を見る。


なんともありませんように


口には何も出さず心で願いを込め、立ち上がろうとする悠希の背中を力一杯押し、あたしなりにエールを送る。


次、悠希がここに戻ってくる時、とうとう結果わかってしまう。


胸に手を当て、高鳴る鼓動を感じていたら拍子抜けする数分で悠希は診察室から再び帰ってきた。


「早っ!」


「歩ぅぅ~ひひっ」


にやけ顔で近付き、何も言わず軽快に隣へ座り、気持ち悪くニヤニヤずっと笑っている悠希。


あたしをじらして楽しんでいるようにもとれる笑みに、ちょっと腹がたつ。


「何?なんなの。どっち?」


「俺はねぇ…」