過去とはいえ22歳の若さでバツイチとなれば、仕事になんらかの支障をきたす可能性がある。


ママに固く口止めされ、バツイチの経歴を二年間客に隠し働き通していたから、今さらこの態勢を変えられない。


「智也の事は誰にも言わないで!客にバレたら働けなくなっちゃう。お願い!本当にお願い!」


あたしは恥ずかしさなど忘れ興奮気味に席から立ち上がるなり慶太さんの腕を掴み、すがり付く思いで叫んだ。


「言うわけないじゃん。俺、同業だぜ?お前も言わねえよな?」


「おぉ、誰にも言わねえから大丈夫だよ。心配すんな」


慶太さんと友達は驚きもせず、顔を見合せてから頷き、真剣な表情で視線をこっちに向けてきた。


「……。…ですよね。あはっ…あははは!」


あまりにも冷静に話す慶太さん達。


二人を見てあたしは力んでいた力が一気に抜けてしまい、笑うしかない。


手に握ったまま忘れていた灰皿の存在。


我にかえると同時にその存在に気付き、テーブルへ素早く置き、手のひらの冷や汗を衣装に拭き取る。


そして、落ち着きを取り戻そうと深い深呼吸をした。


「ふぅっ…」


深呼吸した直後。


慶太さんの友達は神妙な顔付きであたしに話しかけてきた。


「でもさ、智也やべえ男じゃん。地元じゃいいイメージないし。あんな暴れと結婚して大変だったんじゃない?」


「……」


思い出したくない過去に触れられた気がしてつい黙り込み、漂うなんともいいようのない空気に押し潰されそうだ。