薄いカーテンを一枚挟んで、反対側から下半身を覗き見た女医。


数秒にも満たず、ちょっと見ただけで


「あぁ~性病だね」


と慣れた言い方でサラッと口にした。


「えっ!?マジですか!」


「どう見ても性病よ。まぁ普通に検査するけどね」


女医はすぐ看護師を呼び、金属音がカーテン越しに聞こえてくる。


あたしがこれから何をされるのか自分の中で不安と戦い出していると、下半身に違和感が走った。


それと同時に何かを体内にグッと入れられ、しっかり女医は検査をしだした。


「彼氏いるの?」


「はい。いますけど」


変な椅子から降ろされ、女医の前に座り話を聞く態勢に入ると、女医は頭をペンの先でかきながら眉間にシワを寄せ、面倒くさそうに説明しだした。


「あなたは間違いなく性病。毎日薬入れて治療するからちゃんと来て。あっ!彼氏も移ってるかもしれないから性行為禁止。すぐ病院に連れてって検査させなさいね」


淡々と事務的に話す女医。


なんだか感じが悪い。


とても話づらい相手だが、ここだけは聞かねばと女医に話しかける。


「あの~彼氏に移した可能性高いですよね?」


小声で聞くと女医は無知なあたしを見て、呆れ顔でため息まじりに言い出した。


「移したか移されたかわかんないの。あなた多数と性行為してるわけじゃないんでしょ?」


「えっ、多数としてませんよ!」


本当は男を取っ替え引っ替えの過去。


今現状は悠希のみでも過去を振り返り心当たりのあるあたしは、ある意味正直者で、声が裏返ってしまう。


「いろんな男とやりまくってました」と言ったも同然だ。


「まぁどっちにせよ毎日来なさい。明日から当分薬いれるから。今日も薬いれといたからね。じゃ診察は終わり」


「あ、明日からですか…ありがとうございました」


事務的な診察が終わり、ゆっくりと椅子から立ち上がり待合室に歩き出す。


女医から告げられた“性病”という言葉はあたしに精神的なダメージを与えた。


廃人のようなとんでもない顔で会計を済ませ、呆然とあたしは家に向かった。


経験のない性病という未知数なもの。


噂には聞いていたが、自分とは無縁と思っていただけに帰り道は一気に気持ちが沈んでいる。


やべえ。性病ってなんだよ…なる奴は馬鹿とか言っていたあたしは馬鹿なんか?だせぇ…もしかして悠希に移したんかな、それとも移された?どっちなん…悠希が浮気…


車に乗り悠希に対する疑惑は膨らむばかりで、不安はなかなか消えず、ひたすらため息をつく。