駐車場までひたすら無言を貫き、あたしは駆け足に近い速さで悠希の手をぐいぐい引っ張った。


静かな駐車場はカツカツとブーツのかかとが擦れる音だけが響く。


「早く開けて!」


車に到着するなり、あたしは不機嫌な態度で偉そうに悠希を怒鳴りつけ、カギを開けさせた。


悠希は文句一つ口にせずカギを開けてくれ、カギが開いたと同時に二人は車に乗り込んだ。


「どこ行く?」


「家!」


「歩の家ね…」


悠希が優しく聞いてくれているのに、そんな優しさすらどうとも思わない。


本当ウザイ。


ほっといて欲しい。


返事もせず膨れっ面で横を向くと、悠希の車は走り出した。


ネオンも消え、何もない田舎道をゆっくりと走る車。


興奮はおさまらず、悠希を見ないように横を向き、あたしは外を眺めていた。


長い沈黙が続き、車内は居心地が悪い。


でも、意地でも口を開きたくなんてない。


開いてしまったら、汚い言葉しか発せないから。


「…お前さ、態度悪っ」


気まずい沈黙を撃ち破るのはキツイはずなのに、悠希は話し出した。


「はぁ?楽しんでたからいんじゃない!?」


あたしは突然態度の悪さを指摘され、言われてる意味がわからず反抗的な態度で悠希に突っかかっていく。


酔いが強気に油を注ぎ、強い口調で怒鳴り散らす。


「妬きもち出しすぎ」


「はっ!?」


「お前、慶太さんすげぇ好きなのな」


目の前が真っ白になるとはこういう事なのだろうか。


気付かれてはいけない相手に気持ちは見透かされていた。


付き合う形までなんなくクリアーし、これからという時にまさか気付かれるなんて不覚もいいとこ。


悠希は馬鹿じゃない。


一枚うわてをいっていた。


どうせ別れたいと悠希は言うだろう。


男は信じられないし、この際どうにでもなれと投げやりになり、逆ギレをきめてみる。


「大好きだね。忘れらんないもん」


悠希の顔を睨み見ると、ハンドルを強く握りしめ怒っているのがわかった。


こんな悠希


初めて見た。


「俺ってなんなんだよ…」


「えっ」


消え入りそうな声が胸を突き刺し、今まで味わった事のない複雑な心境にただ動揺した。


ここまできたらもう嘘はつけない。


騙しきれない。


あたしが悠希を道具のように利用してたのは紛れもない事実なのだから。