悠希は割って入れない空気を察したのか店員を呼び、みんなが選んだ飲み物を注文してくれた。


はっきり言って何一つ面白くない。


こんな飲み会自体、どうでもいい。


あたしは自分で自分の顔を確認出来ないが、確実に不細工なふくれっ面だ。


「歩?どうした?」


悠希は飲み物を注文し終わると、心配してあたしの顔を覗き込み、話しかけてきた。


「悠希。楽しもうね」


楽しめるはずがないのはわかってるのに、嘘の言葉でその場しのぎをするので精一杯だ。


「お待たせしました」


女性店員はビールとカクテルをテーブルに置き、頭を下げ去っていく。


「じゃ乾杯!」


「は~い。乾杯!」


盛り上がっている慶太と知佳も自分が頼んだ酒を手に、一斉に声を挙げ一口飲んだ。


あたしが遅れ気味にビールを一口飲み、テーブルに置こうとした時


「慶太君のカクテルおいしそ~あたしにもちょうだい」


何を考えているのか、知佳は慶太のグラスを見つめ物欲しげに言いだした。


「いいよ。はい」


阻止する暇もなく、慶太はなんなく自分のグラスを知佳に手渡し、ゆっくり知佳の唇がグラスに密着する。


ああっ!間接キス!?


目の前で繰り広げられる生殺し状態の光景。


目を伏せる訳にもいかず、怒りをこらえるのに必死でテーブルの下で力強くスカートを握り、あたしの妬きもちは絶頂だ。


「歩?お前落ち着きないぞ?」


悠希は目を見開き、あたしの強張ったただならぬ表情をじっくり見て小声で言った。


「今日はかなり飲みたいから介抱して!!」


気持ちが押し潰されそうで苦しくて苦しくて。


悠希に八つ当たりして投げやりに言い放つ。


知佳は悪くない。


慶太も悪くない。


悠希なんてもっと悪くない。


それなのに全てが憎らしく感じてどうしようもない。


あたしはこの場を早く切り上げ、今すぐ帰りたい衝動に何度もかられた。


「マジで!?ウケる~」


「考えらんねえだろ!はははっ」


「でもさぁ…」


飛びかう会話は軽快に一時間続き、面白くもなんともないのにみんなに合わせ、それなりに話して飲む酒。