店内に入ると、先に来ていた慶太はあたしなどどうでもいいのかなんともなさげに手を挙げ、機嫌がいいらしく口元が緩んでいた。


妙に浮かれ気味の慶太の前へ座り、偽りの自分を作り笑顔で話かける。


「よう、ひさ~。これから友達くるから」


「うわぁ~可愛い子?どうなん歩ぅう~♪」


「見てからの楽しみだ!」


「あっそ」


つい腹が立ち、笑顔は一変し、投げやりに言葉を返したら慶太もしゃくに触った表情を浮かべだす。


悠希は二人のやり取りを見て慶太に挨拶し、迷いもなくあたしの隣へ座わった。


テーブルの下で手を繋ぎ離さない悠希。


気のある素振りを崩すわけにはいかず、あたしは指を絡め、適度な力で握りしめた。


慶太と気まずいままで周りを見渡していると、入り口付近で手を振る女が目に入った。


人一倍目立つオーラにまとめ髪。


細身で整った顔。


遠目にいても一発で知佳だとわかる。


「知佳!ここ!」


知佳は息を切らして駆け寄ってくると、顔をあげ


「遅れましたぁ」


と甘い声でみんなの顔を見渡し、感じ良く言った。


慶太の反応が気になり、表情を探り見ると、目がハートになっている。


とことん最悪だ。


慶太は考えていた通りの反応を示し、即、知佳が気に入ってしまったようだ。


「ここ座りなよ」


慶太は迷いもなく知佳を手招きし、自分の隣に座らせ、よほど嬉しかったのか満面の笑みだ。


「どうも。あれ~まだ注文してないのかな?みんな何飲むの?」


メニュー表を広げ、みんなに見えるように配慮する知佳はあたしと違い気のきく女。


人なつっこくすぐ話に交ざり、慶太や悠希と初めて会ったと思わせないくらいみんなに馴染んでいる。


「俺はこれに決定!!ねぇ名前教えてもらっていいかな?」


慶太は知佳に興味津々で、さっさと飲み物を決め、知佳の名前を聞き始めた。


「あたし?知佳だよ。よろしくお願いしま~す」


「俺、慶太!知佳ちゃんかっわいいなぁ。俺タイプ」


猛烈アピールで走り出した慶太の会話は途切れなく、二人は盛り上がっていく。