慶太に会う当日。


気合いを入れて念入りに身支度を整え、自分で飲み会をセッティングしたのに、行く前から一方的に知佳と張り合ってしまう。


生粋のプライド女は、いざ本番を迎えれば負けたくない根性が芽生えるものだ。


“♪♪…♪…”


携帯が鳴り、化粧する手を休め、テーブルに無造作に置かれた携帯に手をかける。


「あぁん?うっせぇな。誰だよ」


画面を覗けば、形だけの彼氏“悠希”の二文字。


いまだに彼氏専用の着信音は慶太のままで、悠希は特別設定などしていない。


タイミングが悪い。


取るか取らないか迷ったが、あたしはとりあえず通話ボタンを押した。


しかし、考えは甘かった。


普通に会話をして普通に切れば問題ないと思い電話に出たが、悠希はひょんなことを言い出した。


「はいよ~どうした?」


「俺だけどさ、慶太さんに聞いたけどみんなで飲むらしいじゃん。一緒に来いって言うから俺も行くから」


「えっ!?」


悠希が来たらうまく話せない。


せっかくゆっくり慶太と話せると思っていたのに、彼氏を挟んだら会話が弾むわけがない。


これではチャンスが水の泡。


「なんかまずい?」


「いや、全然」


付き合ってる手前、断れない。


断れば不自然だし、不信感をもたれる。


悠希が来るなんて計算にはなく、こうなるなんて思ってもいなかったのに。


「俺迎えに行くから待ってて」