騙す形で悠希と付き合い始めたあたしは、悠希の休みにあわせ毎週土日に会うようになっていった。


部屋で何をするわけでもなくダラダラ過ごしたり、買い物に行ったり。


結構うまくいってる。


というより、故意にうまくいかせてる。


ときめきはあっても好きまでは達していない相手と過ごす時間。


得るものは虚しさだけなのにその道を一歩も引き返さず、あたしはとことん突き進んだ。


悠希と付き合って三週間に差し掛かろうした頃。


あたしと悠希を結び付けた慶太から出勤前に電話が鳴った。


あたしは悠希という彼氏がいるのに慶太だとわかり、声を変えて電話にでるいやらしい女だ。


「あいよ~」


「おう、お前早く女紹介しろよ!」


また女。


こいつなかなかしぶとい男…


久しぶりに聞いた愛しい声のはずが、第一声がいきなり女の話。


瑠衣の一件で懲りたのかと思えば、懲りるどころか強気でますますパワーアップしている。


気持ちが冷めたわけではないが、そんな慶太に心底ガッカリしたのは言うまでもない。


「あぁん。んじゃ探しておく」


冷静を装い、平気な返事を口にしても本心は誰も紹介などしたくない。


慶太を渡したくない。


欲を言うなら慶太をガラスケースに閉まって、誰の目にも触れさせたくない。