暗闇の中。


悠希は不自然にくっついたり離れたり、やけにたどたどしく動く。


逆にあたしは男が隣に寝るのなんて慣れてるし、可愛い顔が見えないから調子がいい。


攻撃をふっかけるには全てがベストな状況だ。


「歩ってすごい積極的なんだね。男慣れしてるのわかるよ」


「チャラい女ですから」


「見た目もチャラそうだもん」


「失礼な奴。マジウケるんだけど」


悠希はあたしが男にだらしない女だと見事に見抜いた。


直球でズバッときた。


そのわりにいざ遊び人だとわかると複雑なのか声のトーンが落ちる。


「あ~やっぱチャラいのね…」


「うん。チャラい…」


見抜いたかと思えば落ち込んだり。


掴み所のない悠希との間になんとも言えないどんより感が流れ、そこから思ったより会話は弾まず二人は無言になった。


暗闇の、音一つない静まり返った部屋。


話すのが気まずい。


「あのさ。テレビつけるね」


何か音がなければやってられない。


救いのスイッチを押すと、音と共に真っ暗な部屋が一瞬で光に包まれる。


凄くまぶしくて、あたしは目を細めた。


目が慣れるにつれ鮮明に映し出される悠希の顔。


あっ、顔丸見え。失敗した!


気付いた時にはすでに遅く、目があうと気まずかった空気が一気に男女を意識させる空気に変わった。


ヤバい…


悠希の手が腰にまわり、強く体を引き寄せられ、今にも唇が重なりそうな距離。


顔が近付いて、息がかかる。


拳一個分の距離は近すぎてドキドキする。