好きだから別れて

こいつ何言い出すんだ。意味わかんねえ。……。あれ?ん?ん!?もしかして?


鈍い頭でこの状況を理解するには時間が足りない。


一瞬固まり考えてみる。


時間にしたら十秒程度。


思考回路が繋がりやっと理解できた。


“悠希は歩に興味あり”


相手が自分に好意を持っているとわかると、時間差攻撃で考えれば考えるなり照れくささが頭を支配し始める。


なんだか恥ずかしい。


「なぁに冗談かましてんの!!はははっ」


せっかく悠希が食い付いているのに、いざ悠希の心が自分に近くなると動揺してしまう。


あたしははぐらかそうと声を張り上げわざとらしく笑った。


「冗談じゃないし…」


「えっ?」


「冗談なんかじゃない」


悠希はうつむき小声で呟いた。


つい胸をキュンとさせてしまったが“情は捨ててしまえ”と再び心に問いかける。


あたしは慶太と繋がる為に悠希を利用する。


コイツを使うんだ。


「ねぇ。一緒に布団入らない?」


本領発揮と言わんばかりに女の武器を引っ提げ、悠希に攻撃をしかける。


やれるもんならやってしまえ。


こんな体なんてくれてやると言わんばかりに。


「えぇっ!!いいの?」


「手出さない条件ならね」


ちょっと見下した言い方で微笑みかけ、相手の出方を見る。


やる気?やりたい?


悠希はどんなつもりで部屋にあがったの?


「もちろん出さないよ!!」


悠希の裏がえる声。


とんでもなく緊張しているのか可哀想な声だ。