それはそうでしょ。そこらに酒のビン転がってるし、まだ酔い抜けないもん。


そう思いながらふざけた言い方で、その場をごまかした。


“言ってしまった”と思ったのか黙り込み、気まずそうにしている悠希。


「あんまりさぁ、あたしの顔見ないでね。今日やばいから」


澱んだ空気を明るい空気に変えようと、あたしは自らを汚れたキャラクターにしたてる。


「すっぴん?ん?化粧ハゲた?全然いいよ」


瞬時に気まずさもなくなり、明るい笑顔で話す悠希を確認してから布団に潜り、会話を続けた。


「近くに来て大丈夫だよ。酒臭いけど」


手招きして悠希を布団の近くに座らせ笑ってみたら、悠希があたしをまじまじと見だした。


強い視線を感じたせいで、照れたあたしもやっぱり女だったらしい。


さすがにひどい顔をあまり見られたくはない。


故意に布団へ深く潜り、目だけ出して「みの虫」状態で顔を隠した。


「ねぇ。歩ちゃんっていつも男すぐ部屋にあげるの?」


「はっ?あげるわけないじゃん。慶太の知り合いだからあげたの」


悠希は顔に似合わずストレートに言葉をぶつけてくる。


そういえば散々男遊びをしていたのに、会ったばかりの男をいきなり部屋に連れ込んだのは慶太と悠希くらいだ。


突然、変な質問をされたせいであたしは真顔になってしまった。


「軽い女に見えたんでしょ?」


わざとかまかけをして、悠希がどんな反応をするのか試してみる。


「ん~見た感じはね」


普通気を使うような所なのにあまりにも素直に答えられ


「失礼な男!はははっ」


ギャップのおもしろさにあたしは声をあげ笑ってしまった。


悠希は自分が笑われてる意味がわからないらしく、不思議そうに首をかしげる。


純粋に見える悠希は、あたしの周りにはいないタイプで、調子が狂いそうだ。


「あのさ。歩ちゃんって慶太さんの元カノなんだろ?」


「えっ…あっそう。知ってたんだ。でもふられて今はフリー」


気を許し、悠希をなめてかかっていたが、慶太の件になれば話は別。


一瞬黙り込み、目は泳いでしまったが、負けてられるかと間髪いれずに強い口調で言う。