だらしなく口に缶を加え、何気なく視線を落とし床を見たら、目の前に瑠衣の化粧品が何個か転がってある。


こういう人を化けさせちゃう物は、酔っ払ってるあたしのイタズラ心に火をつける危ない物。


出してた瑠衣が悪い。


これはいっちょやるしかない。


獲物は何匹もいる。


どいつにしよう…


狙いを絞り、ターゲットに決めた直にそっと近付く。


腕を捕まえ、確保したあたしは手に化粧を持ち口元を緩ませた。


「な~お。お前ツラ貸せや」


「ツラってお前、まさか化粧を俺に塗るとか!?」


「四の五のうっせぇな。塗るっつんだよ!ツラ!ツラ!」


「マジかよ!?」


ありえないだろの驚き顔の直。


そのくせ地味に騒いだわりに観念したのか、すんなり抵抗もせず目を閉じている。


直の男っぽい顔はあたしの手により、徐々に可愛いからかけ離れた厚化粧姿に…


「はははっ!かなりうけるんですけど~」


「笑えねって!誰だよこれ!」


「やべぇ~なんつぅツラだ」


あまりの気持ち悪さに右手で指をさし、左手で腹を抱え笑っていたら


「俺もやりてぇ!」


慎は直の化け物な姿に触発されたのか、自分にも化粧してくれとせがんでいる。


慎も結局、途中から一緒に参加し、原型がなくなるおもしろな姿になっていく。


可愛いからほど遠い二人の化け物顔。


みんなの笑いを誘い、どんな酒のつまみよりいい味を出している。