翌日。


あたしは慎に電話せず無断で瑠衣を借り、遊びほうけてしまい申し訳なさを感じていた。


二人の仲が気まずくなっていないか気になり、二人の部屋の前に立ちすくみ、悩んでいる。


絶対喧嘩してるはず。


瑠衣は謝り折れるタイプではないし、別れるとか揉めてたらどうしよう…


考えれば考えるなり想像は悪い方に転がるばかり。


しかし、当の首謀者はどうあがいてもあたししかいない。


自分が頭を下げなきゃいけない立場だ。


“ドンドン”


意を決し扉を叩く。


するとゆっくり扉は開き、瑠衣ではなく慎が顔を出した。


「お~歩」


あたしが瑠衣を誘ったのかどうかを慎が知っているかはわからない。


だが、あきらかにいつもの態度ではなく、喧嘩していたのか怒りが顔に滲み出ている。


「あのさ…昨日、瑠衣借りて悪かったね。あたしの都合でちょっとカラオケつきあってもらったんだ…」


「へっ?」


「あれ?聞いてない?」


「あぁ~そうなんだ…いや俺、瑠衣疑って怒鳴っちゃってさ…あ~マジか…うん。それならいいんだ。男と二人きりじゃないか心配だっただけ~!」


落ちたかと思えば急に表情は嘘みたいに晴れ、こっちが拍子抜けする笑顔を見せた慎。


そんなすぐ許せるはずはないのに、どことなく無理しているように見える。


「瑠衣が悪いわけじゃないの。あたしが無理矢理誘ったん。だから瑠衣攻めたりしないでな!」


「大丈夫だよ。マジ気にしてないから。お前が居たってわかりゃいいんだ」


慎が八重歯を出して笑う時は、本当に怒っていない証。


慎の笑みを見て不安を抱えていた胸をなで下ろし、ホッとした。


「誤解してると悪いなって思ってたからさ。それだけ言いたかったの。んじゃ部屋に戻るね」


「マジ全然気にしてねぇから。わざわざありがとうな」


「ううん。こっちが悪いの。本当にごめんね。しっかり瑠衣と仲直りしてな」


慎に手を振り、扉を軽く閉めたら胸にあるモヤモヤが解消された気がする。


あたしのせいで二人の関係が壊れなくてよかった。


もう瑠衣達に迷惑はかけない。


いつも仲良くしてくれる二人には感謝しきれないくらい世話になっているのだから、大切にしたい。


もう二度とこんな過ちはおかさないと固く心に誓い、あたしは二人の部屋から自分の部屋へ戻った。