いや、むしろ出来過ぎたドラマかよと突っ込みたくなるこの展開。


自分は正直、顔面偏差値が低く可愛い訳ではない。


そのくせ、何故かモテまくりの相当レベルの高い男と付き合う率が高かった。


慶太の連れてきた男は、申し分ない反則な超美形だ。


「受付すんだぞ」


慶太の声で我に返り、たどたどしく男から目をそらし、動揺を隠しきれない自分。


予想を上回る美形な男は慶太と顔を比べても格段に上で、部屋へ向け各自歩き出していたが、あたしは美形過ぎる男に圧倒され、一歩遅れ気味で後ろを着いて行った。


男女に別れ席に座わり、慶太は相変わらず調子いいしゃべりで


「酒頼もうぜ!何がいい?ん~これうまそうじゃね!?」


自分ワールド全快でその場を張りきって仕切りだす。


各自好きな飲み物を注文し、すぐに運ばれた酒を手に持ち


「乾杯いぃ。うめえ~」


慶太が盛り上げようとすればするほど必死さが見え見えで、あたしは唖然とするばかりだ。


付き合っていた時の冷たい印象など微塵のかけらもなく、ただのバカ男にも見えなくはない。


「歩が連れてきた子の名前は?」


「あっ、瑠衣です」


「かわいい顔だね。かなり若く見えるけど…」


慶太はあからさまに瑠衣に狙いを定め、自然な感じで会話をしだしたが


「あっ!」


突然思い出したのか慶太は声を出し、忙しなく連れてきた男を指差した。


「こいつ会社の後輩で悠希(ゆうき)。いい顔してんだろ」


皆一斉に悠希へ視線を向け、悠希は困惑したのか戸惑った顔をしている。


「あはっ。悠希です。よろしく」


頭に手を乗せ軽く挨拶し、可愛らしく微笑む悠希。


ふうぅん。この男を紹介しようとしたのね


そんな可愛らしい悠希を見てもあたしの気持ちは結局揺らがず、慶太に固執したままだ。


「まっ、そんな感じで俺歌入れま~す」


慶太は自分勝手に間髪いれず先陣をきり、カラオケをしはじめ、部屋にしっとりとしたメロディが流れだした。


昔の彼女が忘れられないという歌詞がちりばめられた歌。


歌に感情を込めているのは誰が聞いてもわか熱唱ぶり。


あたしなんなの。慶太の歌に聞き惚れてるし。はぁ。ムカつく奴!でもやっぱ好きなんだわ


自分の気持ちを確かめると共に題名をしっかり覚え、一言一言胸に刻み込む。


段々せつなくなり浸って涙目になりかけた時。


瑠衣がスッと立ち上がった。


「ちょっと電話してきますね」


あたしに耳打ちし、やはり気が気じゃなかったのか急いで慎に電話をかけに行った。