それから何日か過ぎ。


慶太にしか思考が結びつかなくなっていたあたしは故意に男達との関係を絶ち、仕事とアパートだけを往復する日々を送っている。


ずっとあったものがなくなり寂しくないかと問われたら正直寂しいけど「友達がいるから平気」なんて理由で無理矢理結び付け、平然を装った。


「今違う男と体の関係を持つのは違うだろ」なんて自分に言い聞かせたりもして、あきらかに恋愛を匂わす誘いは片っ端から拒絶する。


それくらいあたしは慶太の虜になっていたんだ。


部屋で横になりテレビを見て


「あはははっ!うける~」


とアホっぽく手を叩き、一人笑っていた日。


慶太専用の着信音が部屋に鳴り響いた。


「やべっ。きたし」


敏感に反応し、腕を真上に伸ばしたと同時に携帯を手に取り、勢いよく目の前にかざす。


「やっぱきたきた。慶太からきちまったよ。緊張すんなぁ」


仰向けになり四角い画面に見いるが、胸は高鳴り、なかなか通話ボタンが押せない。


久しぶりに慶太の声が聞けるのに、今の二人の状態は所詮元が付く間柄…


だが、この待ちに待った電話を逃したら次は無いかもしれない。


緊張を逃す深呼吸をし、あたしは震える指先で通話ボタンを押した。


「はいよ~」


緊張に気付かれまいと以前のように調子よく電話に出ると、慶太はちょっと頼りなさげな大好きな声で話しだす。


「俺俺!この間の約束ぅ~いい男いっから今日お前の仕事終わったら合わせたいんだけど、どう?」


「ちょっ、ガンガンしゃべ」


「お前も女連れてこい!」


喜ぶ暇もない早口であたしの声は書き消され、慶太の声が被さる。


「はっ?女ぁぁあ!?」


聞き捨てならないその台詞に意味がわからなくなり、変な発音で返事をした。


「そっ、お・ん・な。絶対連れてこいよ!」


“約束果たしてやるんだからお前も守れよ”


そう言わんばかりに慶太は声を張り上げる。


想定外の展開に思考回路はついていかなかったが、今慶太に何を言っても聞く耳持たずなのはわかる。


「はいはい了解。待ち合わせの場所は?」


あたしはなかなか強者の慶太に呆れ、面倒くさそうに言葉を発する。