「ん…っ、う~んっ」


徐々に目が覚め、うっすら目を開けると、カーテンの隙間から淡い光が漏れ床を照らしている。


テーブルの下に転げ落ちた昨夜の焼酎の瓶にも光が当り、反射して若干眩しい。


「やべえ、さみぃ…」


季節は秋だったが毛布も掛けずに寝ていたせいか、あまりの寒さに鼻先はひんやりし、体も冷えきっている。


酒が残りガンガン頭は痛むが、無意識に手に握られた携帯を開き、ぼやけた視界で画面を覗くとメールが何件か届いていた。


ゆっくりメールを開くと、客と客の間に慶太からのメールが一件。


酔いなんて一瞬で吹き飛んだ。


「慶太ぁ…」


開くだけで泣きそうになったが、現実を受け止めようとあたしはメールを読んだ。


慶太:『歩が智也に付き合ってるって言ったのか?正直いきなり電話きてびっくりした』


率直に書かれた感想。


あたしは慶太の気持ちを考えると申し訳なくなり、勢いだったとはいえ自分がした発言がいかに浅はかだったか思い知った。


返事を返すか躊躇したけど、今できるのは謝罪しか思い浮かばず、電話のボタンを押した。


絶対出てくれないよ…


昨日何度電話しても出てくれなかった慶太。


それを思い出し、勇気がなかったあたしは結局メールに託す事にした。


『つい口を滑らせて智也に言っちゃった…電話かけるとは思ってなかったの。歩が智也に言ったのが悪かったんだ。嫌な思いさせて本当にごめんなさい。本当に本当にごめんなさい』


余計なへ理屈は書かずに自分の気持ちを込め送信する。


「どうしたらいいの。慶太…ごめんなさい…」


大切にしたかった関係がまさかこんな展開で壊れるとは思ってもいなかっただけにどうしていいかわからず、慶太が近くにいるわけでもないのにおさまらない思いが溢れ、携帯を握り泣いてしまった。


しかし、電話はいっこうに鳴らない。


再び虚しく時間だけが過ぎていった。


慶太の顔写真を取りだし、眺めては涙を拭い眺めては涙を拭い、胸は痛む。


顔写真を手にこの間まで二人が笑っていた場所に寝転がり、どうにも出来ない無力さにただ涙した。


この過ぎいく時間の間。


何も知らなかったんだ。


慶太が何を思い、智也に何をされていたのかなんて。


あたしは知らず泣くばかりだったんだ。