歩(あゆむ)22才


バツイチ。


子供なし。


元旦那の浮気や借金、暴力に耐えきれなくなり離婚届けに判を押してから早二年。


家を飛び出し、住む場所も貯金もなかったあたしは何のためらいもなく“色恋”と言う甘い蜜で男から金を巻きあげる夜の世界で働いていた。


一見きらびやかに見える夜の世界。


しかし、蓋を開ければ即閉じてしまいたくなるほど欲望と人間臭さでドロドロしている。


常に相手を騙す事を念頭に入れ、身を削りながら感情を捨てる店の子達。


金と割りきり自ら客に身を預け、愛がなくても抱かれる事を選ぶ女の子だっている。


酒・金・男…


酒・金・男…


ローテーションのように繰り返される何のへんてつもない日常。


あたしはそんな欲で作り上げられた偽りの世界から足を洗えず、すっかり夜色に染まりきっていた。


無論、そんな世界を生きていれば、金だけでなく男に対する価値観がズレるのに時間もかからない。


言い寄ってくる男の顔を見れば


――好きだ好きだ言ってっけどやりてぇだけだろ。そんなにやりたきゃやればいいじゃん。


心底は冷めきり、無表情で笑い飛ばす。


男をなめるだけでなく“性”と言うものを軽く考え、自分の体さえも粗末に扱っている。


ルック映えする気に入った男に誘われれば躊躇一つせず付き合い、すぐ股を開く。


嫌になれば即別れを切り出し、相手がわめこうが泣きつこうが一方的にサヨナラを告げる。


故意にチャラチャラしただらしない男とばかり関係を持ち、愛を感じるどころか、恋愛の真似しかできやしない…


そんな生活を送っていたから端から見ればただの“ヤリマン女”に映っていただろう。


すさんだ状態に薄々気付いていた母からは


「また似たような男選んで…誰が誰だかさっぱりわかんない。もう、あんたの彼氏に会わなくていいわ」


と言われ、呆れかえられる始末。


人生を舐めきり、全てが投げやりでどうでもいい。


あたしは腐った女になり下がっていると知りながらも、そんな馬鹿げた日々を送っていた。