「ったくなんでこんな思いしなきゃいけねんだよ…つか智也なんてどうでもいいって。まず慶太に電話しなきゃ」


智也の手によりかけられた最低な電話。


一方的に不愉快な電話がきて慶太が怒っていないのか。


不安になり、ブツブツ呟き、歩きながら慶太に電話をかけた。


「あれ。出ない」


諦めず電話を何度もかけたが、コール音が聞こえるだけで慶太は一切出ない。


焦りを隠せず急いでメールを作成し、あたしはすぐに送信した。


『智也に慶太の事言ったの謝りたいから気付いたら電話ください』


それでも自分の気がおさまらず、すぐにもう一通送信した。


『ごめんなさい。本当にごめんなさい』


アパートに着き、何をするわけでもなくソファーに腰掛け、慶太からの着信待ちをする。


両手を顔の前で握り締め、前屈みになり、下をうつ向く。


違う人から誘いのメールは入って来ても、慶太の着信音は鳴らない。


待てど待てど、一向にかかってこない。


どうしよう。


絶対怒ってる…


あたしは妙に落ち着かなくなり、部屋に置かれた焼酎をなんとなくラッパ飲みして気を紛らわせた。


原液の濃いアルコール臭さが喉を伝い、体内の血液に吸収されていく。


胃に今日は何も食べ物をいれてない。


空腹ではさすがに一本の酒を一気に流し込むと、効いてしまう。


目が霞む。


ふわふわする。


ふわふわ。


ふわふわ…


いつの間にか酔っ払ったあたしはそのまま記憶なく寝落ちし、テーブルの上に身を投げ、携帯を握りしめた状態で朝を迎えていた。