「んなのどうでもいいわ。んじゃ、バイバイ」


「ごめ…待てよ!歩!!」


「バイバイ!!」


「あゆ…」


あたしは必死に食らい付いてくる男の声を無理矢理打ち消し、一方的に終話ボタンを押していた。


優しくない言葉。


優しくない態度。


酷い女かもしれない。


醜い女かもしれないけど、これ以上二人の関係を継続するなんて望んでいなかった。


元々たいして好きじゃなかった男。


情けをかけたところで自分の気持ちが変わるわけではないし、好きじゃないものはどんなに頑張っても好きになれない。


無駄な努力が大嫌いだったあたしは、切った後も鳴り止まない着信音をとことん無視し続けた。


“♪~♪…”


それでも諦めきれないのか、しつこく鳴り続ける着信音。


その音はまるで、男の嘆きみたいだ。


「あぁ!うぜぇ男!」


イラッとして携帯を力任せに床へと投げつけるが、意外に頑丈に出来ているのか、全く壊れやしない。


めちゃくちゃに壊れる期待をしていたのに、期待にこたえてくれない携帯。


人間どころか、物にまで馬鹿にされた気がする。


「チッ。つまんねぇの!」


一気に不機嫌になり、仏頂面での舌打ちをかます。


うまくいかない人生。


うまくいかない物事。


はっきり言って何もかもが面白くない。


何もかもがうまくいかない。


あたしは酔っぱらいたい気分にかられ、目の前に置いてあった焼酎の瓶を手に持ち、唇に押し当てるなりゴクゴク音を立て勢いまかせに液体を口に流し込んだ。


そして、口の脇から漏れる焼酎の原液を手の甲で拭いとり


「あぁ~っっ、バッカみたい…ダサっ!いらねぇもんはいらねんだっつうの!」


と故意に大声をあげた。


もう二度と触れも見つめもしない男との関係。


この言葉を発したと同時に、自分の中で完璧にピリオドをうったんだ。