「はい撮れた!次は顔ね。笑って笑って」


「本当に苦手だっつうのに」


そう言うわりに慶太は視線をこっちに向け、レンズを見つめ、満更でもなさそうだ。


モデルがいいと撮り甲斐がある。


あたしは自己満足に浸り、フラッシュの光をちりばめ、愛しい慶太を即座に写真へ納めた。


「出来上がるまでちょっと時間かかるから一服つくかなぁ~。へへっ。楽しみ」


浮かれて口にタバコを加え、あたしが至福の一服を楽しんでいると


「映り最悪だったら捨てろよ。マジありえねえ」


今頃になり写真を撮られ、慶太は嘆く。


「んじゃ見せない!ぐちゃぐちゃにされたら嫌やもん」


「あ~しないから見せて!」


「や~だっ。あれ?おっ!うっすら来たよ」


「何!?見せろ!」


たった今言い合いをしたばかりなのに二人はスッと身を寄せ、二枚の写真に視線を移し食い入った。


時間が立ちきらずボヤけて写真は映っていても、綺麗に撮れているのは一目瞭然だ。


「うお~っ。俺の墨ってみんなにはこう見えてんだな」


「そのまんま生き写しみたいに写ってるやん!あっ、見て見て慶太の顔かっわいい~」


「うわぁ。最悪」


「どこが!超可愛いい!超可愛いい~」


慶太が写る写真は適度に光を浴び、瞳は大きく、肌に透明感があってブロマイド風な出来だ。


嫌味なのかってくらいモデル風。


あたしはあまりの出来に芸能人を見る感覚でキャーキャー声をあげ、興奮して体を左右に揺らした。


「誰にも見せんなよ。恥ずかしいから」


「う~ぅ~っ。自信ない…」


“バシッ”


「んごっ、痛っ!」


慶太に頭を平手で軽く叩かれ、あたしはムンクの叫びみたいな顔になっただろう。


「はははっ。歩、変な顔」


“バシッ”


「痛ってぇなあ!」


「うっせえ。やられたらやり返す!!」


負けじと慶太の頭を叩き、腰に手を当て、勝ち誇った態度で目を細め睨んだ。


「なんつう奴だ。マジ気強ええなぁ」


「ええ。男みてぇな女ですから。っておいおい。フォローしようよ」


「どうしようもねえ奴。強すぎだろ」


慶太は一人突っ込みするあたしの姿を見て大声を出し笑いだした。