慶太と体を重ね“彼氏・彼女”になり数日。


二人は仕事以外の時間を互いに費やし、ほぼ毎日会い、日夜問わず一緒にいる。


慶太は昼・夜二つの仕事を抱えていたが、少しの時間でも顔を見に来てくれる。


優しさに触れるたび、どことなく冷めた印象だった慶太のイメージは日に日に覆されていく。


ファミレスへ行って食事をしたり、あたしの趣味だったカメラに付き合い写真屋へ行ってくれたり。


慶太なりにあわせてくれる。


慶太を知れば知るなり、今までにない緊張感や感情が芽生え、意外な自分が見え隠れする。


誰かに盗られたくない。


浮気しないかな。


ずっと一緒にいたいよ。


なんて思っている自分がいる。


こんなムズ痒くなる感情が止めどなく溢れ、捨てていた人間味を引き出してくれる慶太にあたしはますます惹かれていった。


人に興味などなかったはずなのにいつの間にか人を好きになり、好きになって欲しいと願い出す自分が生まれていた。



一、二週間は過ぎただろうか。


いつも通りあたしの部屋に来た慶太は体を重ね終わると、上半身裸でタバコの煙を口に含んだ。


「ねえ。慶太ぁ~あんたの腕にある墨、カメラで撮ってダメ?」


右腕に彫られた色鮮やかな竜の刺青。


指先でそっとなぞり、何処となく他の肌と違っている感触を確かめ、インスタントカメラで写真を撮っていいか慶太に聞くと


「あ~これ?あんま撮りたくねえな」


ちょっとしかめっ面をしてゆっくり煙を口から吐き出す。


形に残る物が欲しくて小さなワガママをしたつもりだったが、慶太の表情を見る限り不愉快そうだ。


「お願い。写真欲しいの。顔写真も欲しかったり…」


「写真撮られんの苦手なんだって」


「ダメ?絶対ダメ?」


「……」


あたしが念を押してお願いしたら、慶太は無言でタバコを灰皿に押し付け、火を消した。


「慶太?」


「…仕方ねえな~2、3枚だぞ」


慶太はなんだかんだ言っても結局折れてくれ、手で髪を整えだした。


「やったぁぁ!」


あたしは床に落ちてある服を羽織り、テーブルの上に置いてあるインスタントカメラを手に持ち構えた。


「まずは腕からいっきまあ~す」


顔は入らぬように腕の刺青に近寄り、気を集中する。


レンズを通し伝わってくる慶太の緊張感。


背筋までゾクッときてたまらない。