暗い部屋に浮かぶのは、吸うたび赤黄色い光を放つタバコの先。


吸い終われば線香花火の如く、スゥと精魂つきる。


「あっちぃ…ヤキはいるっつの…」


指先に力が入らなくて何本吸ったかわからぬタバコの一本が太ももに落ち、床に転がっていく。


床が焦げたらヤバイ。


あたしは手探りでタバコを拾い、何事もなかったかのように再び口に加え、煙を吸い込んだ。


星のない真っ青な夜になっても着信音はない。


メールの知らせもない。


ないない尽くしでもまだ諦めない。


いや、諦めきれる訳がない…


悠希はあたしと同じ嘘なんか大嫌いだ。


あたしと同じで出来ない約束はしない人だと信じてる。


そうこうしてる間に時計の針は12時を指し、虚しくも翌日を刻み始めた。


長い長い1日が二人の全てを消し去ってしまった。


「悠希は嘘なんか嫌いだよ…」


ただの都合のいい理由付けでもいい。


そうでもしなければ、やりきれない。


「10月は1日だけじゃなく最後までが10月じゃん!この10月にかける。もし11月になったら、その時は…」


どうしてもこの恋を終わらせたくなかったあたしは、しつこく未練がましく1ヶ月の期限を儲け、悠希の電話を待ち続けると決めた。