そして訪れた約束の10月1日。


悠希と出逢った肌寒い季節が再び舞い降り、夜は厚手の服が離せなく、悠希に貰った白のパーカーに腕を通した前日。


どうしても目が冴えてしまい、携帯を抱いたまま寝らずにいた。


朝の光がレースのカーテンを突き抜け、もれた光が顔を照らし眩しい。


「うわっ。目にくる…」


手をかざし光を遮ってやつれきった指で布団を引っ張り、体を出した。


手に持った携帯の画面を見つめ、一本ネジの飛んだ人のように意味もなく部屋をあたしはうろつく。


「別れてくれよ!つれぇんだよ!」


悠希が放った言葉が頭の中でリピートして、息がうまく吸えない。


耳に残るその言葉が嘘であって欲しい…


「歩ぅぅ~冗談だよ。別れるわけないじゃん!お前ほっといたら死にそうだし~俺ぐらいしかお前扱えないっしょ」


過去の悠希ならそう言ってくれるだろう。


でも、今の悠希は…


あたしは待ちに待った今日に全てをたくしていたから、やっと決めた職場に朝一で欠勤の連絡を入れ、何度も携帯を覗き込んだ。


かすかな期待にかけるしかない。


どんなにかすかでも「お願い。笑わせて」と願うばかりだった。


だが、時間は待ってはくれない。


テーブルに肘をつき、何本もタバコをふかす。


過ぎ行く時計の針を確認しては睨み、携帯と交互に往復する目線。


まだ?


まだ?


早る気持ちで悠希の電話をひたすら心待ちにしていた。


テーブルに体をグデッて張り付け顔を上げ、タバコの灰を灰皿に落とそうとすると気付けば灰皿は山盛りになっていて、部屋は明かりもつけず暗くなっていた。