逃れられない。


話すしか残された道はないんだ。


あたしは自分の幼少期から今に至るまでを順を追って語りだした。


ギャンブルに明け暮れ、家に寄り付かない父。


幼い時、父の浮気相手に合わせられた不快な思い。


姉・母に対する凄まじい暴力。


異常なまでの借金癖で破産した事。


中学生の時、金絡みで父は恨みをかい、そのせいで父の友達に誘拐されかけた過去。


「殺される」と必死で逃げたが、体に染み付いて離れなかった男ものの整髪料の匂い。


あたしと母親を捨てて出て行った日。


そして、母親に最近聞いた真実。


「あなたはお父さんがおろせと言ったいらない子よ」


涙を流し、心を乱して今のやりとりまで簡単にだが全て話した。


「わかった!もういい!話さなくていい!」


悠希の顔は怒りに満ち、こわばっていた。


「だからあたし…もうぅ…」


「もういいって!思い出さなくていい!ごめん。ごめんな」


悠希は手を顔の前に差し出し、消え入りそうなあたしの声を中断させた。


嫌われたかもしれない。


けど、ちゃんと伝えきれていない思いがある。


あたしは悠希の手を押しのけ、再び口を開いた。


「歩、甘ったれだからつらいって自分に酔ってたんだよ。だからいいの。うちはこういう家族なの」


――笑っちゃうグダグダじゃんか…



頭を抱え、涙を見せぬように両手で顔を隠す。


ひくつく体や弱い自分などやっぱり見せたくない…