翌日。


仕事を終え、しつこく食い下がる客の誘いを振りきり急いで店を出た。


高いヒールも気にせず階段を駆け降りると、約束通り白のセダンが止まっている。


「はぁ…はぁ…おまたせ!」


「よう、お疲れ!早く乗って乗って」


客の誘いを断り店を出た以上ここで捕まるわけにはいかないと、息を切らし慌てて車に乗り込む。


「出発するぞ」


息をつく間もなく慶太の掛け声で車は即座に動き、軽快にスピードをあげた。


息を大きく吸い込み一息つこうとした時。


車の匂いは昨日と何ら変わりない事に気付き、あたしは昨日の続きをするような錯覚に陥りそうになっている。


「つ~か~れ~たあぁぁ」


「そりゃ酔っぱらい相手じゃ疲れるだろ。それに歩の店は異常な数の客が来るしな」


「今日もやばかった…」


両手の指を絡ませ腕を前に伸ばし、苦しそうな声を出して疲れてますをアピールする。


「んでどこ行く?」


前を見ている慶太にそんなアピールが伝わる訳もなく、どこに行きたいかあっさりと聞いてきた。


「ん~どうしよっかな。まずはドライブしよ」


慶太に会えただけで満足し、したい事が思い付かずその場しのぎで口にする。


「ドライブでいいんだな?適当に走ってみるか」


「うん!」


飲み屋街を抜け国道に入り、たくさんの対向車が行き交う中、二人を乗せた車は宛もなく走る。


対向車が通る度に写し出される慶太の横顔。


凛としてとても美しく、女のあたしでも完璧に負けてしまいそうだ。


「はぁ…」


「ん?どうした?」


あまりの美しさについため息が漏れると、慶太は不思議そうに質問してきた。


「なんでもない」


「お前どうしたぁ~?らしくねえな。昨日みたくかかってこいよ。おらおら」


人の気も知らないで、ちょっとバカにした風に話す慶太。


そんな慶太にイラッときたあたしは手を振りかざし、バシッと音がする程に肩をおもいっきり叩きつけた。


「いってええぇ!!なんだよ!」


「痛くしたんだよ!人をなんだと思ってんだ!」


声を荒げ、慶太から視線を反らし背を向けると、外に視線を移し口を尖らす。